尼子騒兵衛さんの漫画「落第忍者乱太郎」、及びそれを原作としたアニメ「忍たま乱太郎」(NHK Eテレ)をミュージカル化した、略称“忍ミュ”。12月27日にNHK文化センター青山教室で第3回忍ミュ講座が開催されました。内容は2023年に全45公演を完遂した第13弾「ようこそ!忍たま文化祭!」の総括。初演・再演・学園祭と濃密に駆け抜けた第13弾をキャスト、演出家と振り返りました。
目次
- 怒涛の大供給となった第13弾を3人で総括
- 講座参加者からの事前質問でさらに第13弾を深堀り
- ミュージカルをもっと楽しむために…「リプライズ」を解説
- 忍ミュの名曲「今も変わらない」「愛しき者よ」をキャストと大合唱
- 忍ミュ講座だけでしか入手できない譜面や台本などの資料を配布
- 忍ミュ講座を終えて
- 配信について
怒涛の大供給となった第13弾を3人で総括
今回は講師として初回講座から登壇している脚本・作詞・演出の竹本敏彰さんに加え、13弾でストーリーテラーとして活躍した中在家長次役の新井雄也さん、長次と信頼関係が厚い七松小平太役の坂垣怜次さんの「六年ろ組」の2人が登場しました。
2023年は春から秋にかけて第13弾公演「ようこそ!忍たま文化祭!」を初演と再演で上演、冬にはライブイベント「忍術学園 学園祭2023」を開催と忍ミュファンには久しぶりとなるうれしい大供給の1年に。
「竹さんワールドの中で芝居しながら、笑って楽しく過ごせました。再演もふたを開けたらめちゃくちゃおもしろかった」と新井さん。「忍ミュ名物の日替わり要素も多く、本当に笑った1年。第13弾は100点以上のものが出来た」と坂垣さんがコメント。
初演が好評で再演がプレッシャーだったという竹本さん。「再演でどこまで進化ができるのか…どうしたらもっと楽しくもっと笑いを取れるのかにチャレンジして90%台本に手を入れた」と裏話を明かしました。
講座参加者からの事前質問でさらに第13弾を深堀り
参加者から講座開催前に募った質問に回答する形式でさらに第13弾を深堀りすることに。一番多かった質問はそれぞれの役作りについて。「長次は笑うと怒る、怒ると笑顔というあべこべなキャラクター。笑いどころが多い第13弾はとしてはとてもつらかったが長次の枠が広がった」と新井さん。「小平太は誰よりもとにかく元気で明るいことを心がけていた」と坂垣さん。
新井さんの役柄について「無口な長次を深堀りして悩んだが、心の声を歌にすることが多いミュージカルで長次の幅が広げられた」、坂垣さんの役柄には「小平太みたいな太陽のようなキャラクターを演じるのは難しいと思う。怜次は生まれながらに陽を持っているよね」と竹本さんがそれぞれコメントしました。
第13弾で一番お気に入りのセリフについては「私は学園長先生がいない忍術学園なんて考えたくない」と坂垣さん。「あの元気な小平太が落ち込んで泣きのモードになったのが印象的。元気な明るいキャラだからこそあまり見せない面が見えた魅力的なシーン」とシリアスなセリフをチョイス。一方、新井さんは「…何してくれたポルテがずっと頭から離れない」と外国語が混じったセリフをつぶやくと会場は大いに盛り上がりました。
六年生がお互いの似顔絵を描くシーンも話題に。モニターに描かれた絵が登場すると「画伯集ですよね(笑)」と竹本さん。似顔絵を描く演出を尼子さんに相談したことやキャラ同士の関係性にのっとって描いていることなどを説明。新井さんと坂垣さんもイラストでこだわった点を明かすと会場から笑いが。
ほかには「ダンスや殺陣への演出」「異なる会場での演出変更」「得意武器を練習する時に苦労した事やお手本にしているもの」「一番大変だった日替わりや打ち合わせについて」などファン目線での鋭くて深い質問が多数。学園祭でラジコンカーを使って紙をばらまいた演出を竹本さんが話すと坂垣さんが「…知らなかった」と驚く場面も。第13弾の裏話や制作秘話がどんどん明らかになっていきました。
ミュージカルをもっと楽しむために…「リプライズ」を解説
忍ミュだけでなく、ミュージカル全般をより楽しめるようにと竹本さんがミュージカルの表現⽅法の⼀つ「リプライズ」を紹介。⾳楽⽤語で反復を意味するリプライズはその作品やその⼈物のテーマ曲。落語家の出囃子、プロレスラーの入場曲のようなものと説明し、実際に忍ミュのドスマスや⼾部先⽣が登場時に流れるメロディをかけるなどしてわかりやすく解説しました。
忍ミュの名曲「今も変わらない」「愛しき者よ」をキャストと大合唱
締めくくりは忍ミュ講座恒例のミュージカルナンバーをみんなで歌うコーナー。竹本さんがいつか忍ミュ講座で歌いたかったという思い入れの強い第10弾「愛しき者よ」は、善悪さまざまなキャラクターが登場し、最後は全員が一つになって歌い上げるカンパニーソング。そして、新井さん演じる長次と12弾から忍ミュに参加した坂垣さんの小平太の掛け合いセリフが新鮮な第11弾の「今も変わらない」の2曲を会場の受講者たちともに熱唱しました。
忍ミュ講座だけでしか入手できない譜面や台本などの資料を配布
毎回好評の忍ミュ講座オリジナル特典、今回は第10弾、第11弾の台本の一部、譜面を配布しました。来場者だけでなく、オンラインで受講された方にはダウンロードで入手可能に。ミュージカルナンバーを歌うコーナーでキャストたちと同じ譜面を見ながら熱唱した経験は一生の思い出になるはず。セリフやト書き、細かい演出などが書かれた台本を読み込むと、またさらに忍ミュの深みにはまるのではないでしょうか。
忍ミュ講座を終えて
●竹本敏彰さん
作品がどうやって作られるのか、またどういう困難があるのかなど、皆さんが知りたいところを真面目にお伝えするのが忍ミュ講座のちょっと面白いところかなと思っています。作品の裏側などを作り手側と一緒に共有するというか、第3回目にしてそこが確立されてきたかなと思いますね。ノートを取るなどみなさんが真剣に聞いてくださっていて、本当にうれしかったです。
●新井雄也さん
講師としてというのもおこがましいんですけれども、忍ミュの良さや制作的な裏話を皆さんに届けられたかなと。こんなに近い距離でみんなと一緒に忍ミュの曲を歌うというのも初めてでした。盛り上がれてよかったです。ちなみに講座の見所は序盤で怜次が椅子から落ちるところですね(笑)
●坂垣怜次さん
僕は最近の第12弾からの参戦なんですよ。ミュージカルの忍たま乱太郎だからこだわっている音や僕が知らなかった技術についても聞けてよかったです。今回素敵な時間を共有させてもらったからこそ、これからもっと素晴らしいミュージカルを届けられる、頑張れるなという意識が芽生えた気がします。
配信について
■第1回~第3回「ミュージカルで表現する『忍たま乱太郎』の世界」 オンデマンド配信中!
これまでに配信した「ミュージカルで表現する『忍たま乱太郎』の世界」(第1回~3回)を期間限定でオンデマンド配信!購入者特典として、NHKカルチャーの講座で使用した資料も配布いたします。購入後、配信ページからダウンロードしてご覧ください。
*オンデマンド配信は終了しました。
講師:竹本敏彰(演出)・反橋宗一郎(善法寺伊作役)
講師:竹本敏彰(演出)・渡辺和貴(潮江文次郎役)・鈴木祐大(食満留三郎役)
講師:竹本敏彰(演出)・新井雄也(中在家長次役)・坂垣怜次(七松小平太役)
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◆レポート/ライター
高田りぶれ(たかだ・りぶれ)
山形県生まれ。ライターなど。放送作家のキャリアを生かし、テレビ・ラジオ番組のおもしろさを伝える解説文を年間150本以上執筆。趣味は観ること(プロレス、サッカー、相撲、ドラマ、お笑い、演劇)、遠征、料理。