「忍ミュ」をいつかブロードウェイで⁉ 演出家・竹本敏彰&善法寺伊作役・反橋宗一郎インタビュー

「忍ミュ」をいつかブロードウェイで⁉ 演出家・竹本敏彰&善法寺伊作役・反橋宗一郎インタビュー

NHK文化センター青山教室で「ミュージカルで表現する『忍たま乱太郎』の世界」講座が開催されました。講座終了直後に脚本・作詞・演出を手掛けた竹本敏彰さんと善法寺伊作役の反橋宗一郎さんにインタビュー。講座では語り切れなかった「忍ミュ」への熱い想いやディープな楽しみ方、今後の展望などについて聞きました。


目次
1.「忍ミュ」講座はふたりとも初体験
2. 俳優、演出家が語る「忍ミュ」の魅力
3. 子役の演技、オフ芝居…「忍ミュ」のディープな楽しみ方
4. 伊作のリアルを見せる生々しい演技を意識
5. 演出は交通整理。役者の意見に耳を傾けることを大切に
6. 「忍ミュ」は…実家ですね(笑)
7. 「忍ミュ」をいつかブロードウェイで
8. 第1回~第3回の講座をオンデマンド配信中 ※終了しました

1.「忍ミュ」講座はふたりとも初体験

――おふたりの息がぴったり合った楽しい講座でした。

竹本:僕は専門学校やタレントスクールなどで教えたりしているので、ミュージカルについて話すのはよくやっているんですね。でも、「忍ミュ」の講座は今回が初めてでした。講座を開くことでファンの方とひとつになれたのは貴重な経験だったなと。稽古場・劇場以外で作品について役者さんと一緒に話すのも初めてで楽しかったですね。

反橋:僕も「忍ミュ」の講座は今まで経験がなかったです。もともとタケさん(竹本さん)と話すのが大好きなんですよ。いつも稽古場でめちゃくちゃ盛り上がるんで(笑)

――今回の講座では貴重な台本や譜面の一部を配布されましたね。

竹本:観劇される方は台本や譜面を見たり、手に取ったりする機会はなかなかないですからね。実際にどういうものを使って作品を作っているのか、具体的にお見せしたほうが親しみがわくんじゃないかなと思って渡してみました。

 

2. 俳優、演出家が語る「忍ミュ」の魅力

――おふたりが思う「忍ミュ」のおもしろさ、醍醐味を教えてください。

反橋:「忍ミュ」は日本中で多くの人に知られているアニメ「忍たま乱太郎」を原作にしたミュージカルです。アニメは猪名寺乱太郎を主軸にストーリーが展開していますが、ミュージカルでは上級生などさまざまなキャラクターが中心になったりするんですね。ミュージカルはアニメとは少し違う見方が出来るおもしろさがあります。

アニメや、その原作の漫画「落第忍者乱太郎」も広く知られている作品なので、忍術学園やキャラクターの設定をわかっている人が多い。だから、観劇未経験の方にとっても観に来やすい作品だとも思いますね。そこも強みなんじゃないかな。

竹本:まず歌、ダンス、芝居にプラスして殺陣、アクションが入った総合芸術・ミュージカルとしてのおもしろさがありますね。そこにプラスしてギャグがあるという(笑)ギャグや殺陣があって、シリアスなシーンもあれば大笑いさせるシーンもあるのが魅力です。演じるほうは大変だと思いますけどね(笑)

あとはキャラクターですね。原作者の尼子騒兵衛先生が生み出したキャラクターがものすごくたくさんいるわけですから。そして、そのキャラを演じるキャスト陣の層の厚さ。下は小学校2年生から上は160歳?!(笑)までというのはこの作品ならではの魅力ではないでしょうか。

 

3. 子役の演技、オフ芝居…「忍ミュ」のディープな楽しみ方

――おふたりおすすめの「忍ミュ」のディープな楽しみ方を教えてください

反橋:「忍ミュ」では1年生の猪名寺乱太郎、摂津のきり丸、福富しんべヱを演じる子役たちを2チーム立てています。みんな作品を作る上で目指しているところは一緒なんですけど、同じ芝居にはしないんですね。1年生たち全員の芝居の違いを楽しんでほしいです。

あとはタケさんが作ってくれる舞台のどこを見ていいかわからなくなるシーンも注目(笑)キャストたちがワンシーンの中で同時にいろいろな芝居をするシーンがあるんです。初見では全員分確認できないし、何度観に来ても楽しめる仕掛けではありますよね。そこで展開するアドリブのような「オフ芝居」は細かく決められていません。だから役者も楽しんで演じているんですよ。

竹本:僕も「オフ芝居」はポイントのひとつだと思いますね。テレビ番組はスイッチングされたり、編集されたりするので自分が見たいところを見ることができない。でも、舞台は自分が気になる場所を好きなだけ見ていられるんです。

ファンの方々にはそれぞれ推しキャラがいて、見方がみんな違うんですよね。「メインのキャラがしゃべっているとき、自分の推しはセリフの裏で何をやっているんだろう」とか気になってしまう。舞台で役者はいろんなところでいろんなことをやって楽しむ。観客は自分が見たいところを見て楽しむのがいいんじゃないかと思っていますね。

 

4. 伊作のリアルを見せる生々しい演技を意識

――「忍ミュ」での役柄・善法寺伊作を演じる上で大切にしていることは?

反橋:原作の漫画やアニメとの違いを見せなくてはいけないと思っています。漫画やアニメでは描いていないその先を見せないと舞台でやる意味がない。「伊作がリアルにいたらこうなんだよ」と生々しさを見せてあげることを一番意識していますね。それをみんな理解してやっているから、ああいう生っぽい舞台になるんですよ。

登場するキャラクター同士の関係性も大切ですね。僕がひとりで伊作になろうとしてもなれないわけで。みんなが伊作として接してくれるから僕が伊作になれるんです。自分の役柄というよりは、他のキャラクターをどう立たせるかが勝負どころですね。

 

5. 演出は交通整理。役者の意見に耳を傾けることを大切に

――演出をする上で心がけていることはどんなことでしょう。

竹本:基本的に演出は交通整理だと思っているんですよね。稽古場でさまざまなことを試して、みんながどう思っているのか意見を聞くことを大切しています。台本は自分が机の上で空想で書いたものだから絶対ではないんです。その台本の動きを実際に生の人間がやるとどんなことが起こるのかはやってみないとわからない。そして、試した瞬間に生まれたものを取りこぼさないようにも気を付けています。

 

6.「忍ミュ」は…実家ですね(笑)

――反橋さんにとって「忍ミュ」とは?

反橋:実家ですね(笑)「忍たまファミリー」という言葉が大好きで「家族」という言葉が似合う作品だなと思うんです。12弾の初演(2021年10月開催)で本番中に僕がケガをした時に役者たちが、誰が指示するでもなく、「そのセリフは僕が言いますよ」とか自主的にカバーに動いてくれたんですね。それが家族っぽいなと。1年くらい期間が空いたのに稽古場に来たら安心する感じ。これってなんだろうと考えたときに実家だなと(笑)

「忍ミュ」はいわゆる2.5次元舞台が今ほど多くなかった頃から続いている作品なので、みんなでつないでいかなければいけないとも思いますね。過去に出演していた役者の想いやこれまでの歴史を新しい役者に伝えていくという使命もあるかなと。いろいろ考えると本当に「忍ミュ」に似ている作品はどこにもないんですよ。唯一無二のジャンルだなとも思いますね。

 

7.「忍ミュ」をいつかブロードウェイで

――竹本さんが「忍ミュ」で描いている夢はありますか。

竹本:「忍ミュ」は最高のエンターテイメントだと思うんですよね。ミュージカルという総合芸術のなかにアクションやギャグを満載にしている贅沢な作品。それをまた2時間の中に収めているというのが…結構なジェットコースターですよ(笑)。今回の講座をオンラインで海外から受講された方もいらっしゃるかもしれませんが、いつか海外にも飛び出していきたいですね。

日本のアニメや漫画は世界的にも人気が高い。アメリカの方は特に忍者やギャグが大好きだからウケると思うんですよ(笑)。ニューヨークのオフ・ブロードウェイなど小規模な場所でもいいので上演したいですね。それと、「忍ミュ」など何かしらの2.5次元ミュージカル作品を常時上演している劇場街が日本に欲しいなと。イギリス・ロンドンのウェスト・エンド、ニューヨークのブロードウェイのように劇場が連なっているイメージですね。日本のどこかに2.5次元劇場街があったら素敵だなと思っています。

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講師:竹本敏彰(演出)・反橋宗一郎(善法寺伊作役)


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講師:竹本敏彰(演出)・渡辺和貴(潮江文次郎役)・鈴木祐大(食満留三郎役)


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インタビュー/ライター
高田りぶれ(たかだ・りぶれ)


山形県生まれ。ライターなど。放送作家のキャリアを生かし、テレビ・ラジオ番組のおもしろさを伝える解説文を年間150本以上執筆。趣味は観ること(プロレス、サッカー、相撲、ドラマ、お笑い、演劇)、遠征、料理。
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