1980年代、アーティストと歌番組は今よりずっと密接な関係でした。歌謡曲好きにとって、当時の思い出はすべてテレビ番組と共にあると言っても過言ではありません。一方、歌手にとってもまずはテレビで人気者になることが成功の絶対条件。そんな時代において「あたりまえ」に染まらなかった我らが歌姫・中森明菜は、異色の存在感で私たちを魅了しました。
今回は、NHKの人気番組だった『レッツゴーヤング』『ヤングスタジオ101』をはじめとする当時の歌番組を思い出しつつ、あらためて彼女の魅力についてお話したいと思います。
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歌謡曲やアイドルのことで頭がいっぱいだったザ・昭和の小学生

例によって個人的な話で恐縮です。
1980年代を平凡なイチ小学生として過ごしていた私は、週末に家族そろってちゃぶ台を囲みながらとる夕食が何よりの楽しみでした。我が家はカラオケBOXが登場するずっと前から応接間のステレオでカラオケ用レコードを流しながら歌合戦をしていたほど歌謡曲大好き家族。
当時の歌番組といえば、TBS『ザ・ベストテン』(1978〜1989年)、日本テレビ『ザ・トップテン』(1981〜1986)『歌のトップテン』(1986〜1990年)、フジテレビ『夜のヒットスタジオ』(1968〜1990年)などが思い出に残っていますが、どの番組も我が家にはちょっと遅い時間のスタートで、いくら歌謡曲好きな家庭とはいえあまり観せてもらえませんでした。
あの頃、好きな歌番組は数あれど『レッツゴーヤング』は特別だった

そんな中、NHK『レッツゴーヤング』(1974〜1985年)だけは放送が日曜日の夕食どき、18時からだったので堂々と観ることができました。そういえば、バックダンサーを務めていたヤングメイツ(スクールメイツがNHKで活動するときのグループ名)のチアリーダー風ユニフォームは、今思えば当時の世のお父さんたちの密かなお楽しみのひとつだった気がします(少なくともうちの父親は嬉しそうでした)。
舞台裏が丸見えだったことも子ども心に面白かった。ダンサーが慌てて登場したりハケたり、手動でスポットライトをあてるスタッフが映っていたり、バックバンドが楽譜をガン見しながらテンパっていたり!
さらにリクエストハガキが紹介されるなど、視聴者参加型のアットホームな雰囲気が家族団欒に一役買っていました。リクエストハガキといえば、手の込んだイラストや手書きの袋文字(女子がこぞって練習した風船を膨らませたような文字!)満載の作品が毎週紹介されていましたね♡ どのハガキも同じテイストのイラスト(学研の雑誌『Lemon』のさいとうまりさん風)で、当時大流行していたサイン帳を思い出します。小さなバインダー型で、一枚ずつ用紙を外しクラスメイトに配りましたよね。プロフィールやお別れのメッセージをイラスト付きで書いてもらったりして。
バラエティー色強めな80年代歌番組でも際立つ存在感
さてさて、そんな時代において明菜ちゃんは異色の存在でした。先述の「レッツゴーヤング」にはサンデーズという番組オリジナルのグループがあり、1980年ごろからは主にアイドルたちがメンバーを務め司会するスタイルに。聖子ちゃんは初期のメインメンバーで、楽しそうに歌って踊って司会もする姿が記憶に残っています。でもなぜか明菜ちゃんは最後までその中に入ることはありませんでした。他のアイドルとは違う特別な存在に映ったものです。
明菜ちゃんといえば、アイドル仲間の中では唯一キョンキョンこと小泉今日子さんだけに心を許していたという話が有名ですが、私たち一般人から見ても明菜ちゃんは心の内を簡単には見せないミステリアスなオーラをまとっていました。だからこそ、たとえば『夜のヒットスタジオ』司会の芳村真理さんがプライベートに関する質問でアイドルをたじろがせていた中、明菜ちゃんには一目置いていたように思います。
『ヤングスタジオ101』ではアーティスト性を追求し本領発揮

前記事でお話を伺った元ディレクターの島田雄三さんによると、明菜ちゃんは仕事の中でレコーディングが一番好きだったそう。繊細な性格ゆえ周囲の空気に影響されやすく、テレビ出演は緊張することが多かったとも伺いました。となるとこれはあくまで推測ですが、公開収録は集中しづらかったのかもしれません。
当時の歌番組は、イントロの間に司会者が近況などを紹介するのが常。イントロで集中力を高め歌の世界にグッと入り込むタイプの明菜ちゃんには苦手だった可能性も!? そして公開放送では会場からは大声援の嵐。とにかく歌手にとって(言葉は悪いですが)気が散る要素満載でした。
そう感じたのは、『レッツゴーヤング』の後を継ぐ形で始まった『ヤングスタジオ101』の映像を観たときです。明菜ちゃんが、それまでとは比べものにならないくらい「アーティスト」に見えました。スタジオ収録になったため照明や音質はもちろん、明菜ちゃんの没入感が違うのです。サービス精神旺盛で気遣いの人だからこそ、観客を気にせず歌の世界に入り込めるスタジオ収録は、彼女が本当に表現したいものを引き出してくれたのかもしれません。
歌姫・中森明菜が進化し続けるアーティストと証明される貴重な記録

4月から配信している『中森明菜 Best Performance on NHK』ですが、今後も2026年3月まで珠玉の名シーンを続々と配信予定です。ここまで出そろったからこその楽しみ方をひとつご紹介。それは、同じ曲くくりで違う時期のパフォーマンスを見比べることです。
まず、生演奏ならではですが毎回曲のテンポが微妙に違います。「この日は時間が押してたのかなぁ」なんて想像しながら観るのも面白い♪ そんなときでも顔色ひとつ変えずにいつも通りに歌い上げているのはさすが!
次にチェックしていただきたいのは、明菜ちゃんの歌い方、振り付けの変化です。私のおすすめは『禁区』。発売日まもない1983年10月ごろは、少々ぎこちない振りでテンポも心なしかゆっくりめ。11月の『第27回レコード祭歌謡大会』や12月の『アイドル大競演』になると振り付けがこなれてきてテンポも速い。表情もその都度全然違うので、ぜひ皆さんもマニアックな視点でお楽しみくださいね!
ここ数年、公式YouTube では『スローモーション』『飾りじゃないのよ涙は』などのJAZZバージョンでまた違う魅力を発信中の明菜ちゃん。いったいどこまで進化し続けるのでしょう。これからも目が離せません♡
(ライター/花摘マリ)
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