中森明菜といえば、特筆すべきはその歌唱力と楽曲の素晴らしさですが、多くの方は彼女を思い出すとき、歌い踊る全身の姿が頭に浮かぶのではないでしょうか。あの独特なステップや振り付け、彼女だけが着こなせるデザインの衣装と共に…。
5月1日は彼女のデビュー記念日。そんな特別な月にお届けするのは『NHK紅白歌合戦』『レッツゴーヤング』『ヤングスタジオ101』から選りすぐりの映像の数々、そして今回は彼女の衣装やパフォーマンスについてのお話です♪
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出演者にとっても視聴者にとっても特別だったNHK紅白歌合戦

最近のアーティストは普段着風の(実際はハイブランドだったりするのですが)ラフな衣装でテレビ出演することが多くなりました。みなさんセンスがいいし、親しみやすい雰囲気も魅力といえば魅力。
でもね、昭和の時代は違ったんです!
私と同世代の皆さんなら「そうそう!」と懐かしんでくださるのではないかと思いますが、当時のアイドルは約3ヶ月間隔で新曲をリリースし、曲ごとにあつらえた衣装が決まっていました。ただし年末の一大イベントだったNHK紅白歌合戦だけは普段とは違う特別なデザインで、しかもお金のかかっていそうな(?)豪華衣装で歌う推しの姿を拝めるとあり、視聴者はソワソワと期待しながらその日を迎えたものです。
明菜ちゃんの衣装はいつだって私たちの憧れ&お手本だった

当時のアイドルには珍しく、振り付けを自分で考えていたという明菜ちゃん。当時のスタッフは「セルフプロデュース力は、確かにデビューのときから片鱗が窺えました。とりわけこだわりが強かったのは振り付けや衣装」と証言しています(『オマージュ〈讃歌〉中森明菜』島田雄三・濱口英樹 著/シンコーミュージック・エンタテイメント)。
いわゆるアイドル的なミニスカートやパステルカラーのドレスはあまり好みではなく、紅白初出場の際も「着てほしい衣装」と「本人が着たい衣装」との間で調整の末、あの金と黒のインパクトのある衣装に決まったそうです。(5月1日配信 第34回NHK紅白歌合戦『禁区』)
これには当時小学生だった私は度肝を抜かれました。どちらかといえば聖子ちゃん派だった私でしたが、ファッション面では明菜ちゃんの衣装を真似ることが多かったので、まだ目新しかった「スパッツ」(今でいうレギンス)にクギづけ! 早速その斬新なスパッツとミニスカートの重ね履きにチャレンジしました。他にも『サザン・ウインド』の衣装に憧れてオフショルじゃない服を無理に伸ばして肩を出したり、『飾りじゃないのよ涙は』で明菜ちゃんがいつも着ていたサテンシャツの着こなしをしたくて、シャツの下の方のボタンを留めずに裾を結んだりしていました。少しだけマネできるところが明菜ちゃんスタイルの魅力だったんですよね〜。そういえば、明菜ちゃんみたいなキュッとしたウエストになりたくて、いつもお腹をこっそりへこませていたなぁ…(笑)。
目線や衣装の魅せ方まで計算されたパフォーマンス

さて、すでに配信されている映像の中でも特に注目したいのは、5月1日配信の第38回NHK紅白歌合戦『難破船』です。個人的には、1986年ごろから急激に妖艶さを増したように感じる明菜ちゃん。その極みがこのパフォーマンスです。貴婦人風の大きな帽子と、ミニマムなシルエットのロングドレスにオーガンジーを重ねたスタイリング。全身黒なのになぜか華やか。さらにこの頃からトレードマークとなった黒く艶めくアイライン。ゾクゾクします。怖いくらい。
明菜ちゃんの魅力は、とにかく細部まで計算し尽くされた目線の美しさ。まさにこのパフォーマンスはそれでしょう。とくに間奏中の動きといったら…目が離せません。後ろを向いたところからの、シアーな帽子ごしにカメラに向かって振り向く姿の美しさといったら国宝級! ここだけ何度リピート再生したことか。歌っていない部分でここまで観る人の心を掴む歌い手が他にいるでしょうか。ちなみに、明菜ちゃんはデモテープで曲を聴く段階から自身がステージで歌う姿や振り付け、衣装の魅せ方などをイメージしていたそう。
世代を超えて魅了される色褪せることのない存在感と世界観
三度の食事よりカラオケが好きな私ですが、歌トモの間で一番人気の明菜ちゃんの曲は意外にも『難破船』です。けっこう難易度の高い曲なのに何故!?
それは…曲の世界で主人公として歌う明菜ちゃんに、自分もなれるような気がするからなんです(というかなりたい)。
先日、いわゆる「Z世代」の方々の声を伺う機会があったのですが、明菜ちゃんについて「感情を全身で表現する魂の『アーティスト』」「憑依力がすごい」「カラオケでDESIREを歌えるとステイタス」「可愛いだけじゃなくカッコよさもある」「スタイリングの意外性」という声を聞くことができました。
SNSなどの普及により人もモノも流行も均一化されがちな今、唯一無二の存在感と世界観は当時を知らない世代からもリスペクトの対象なのかもしれませんね。
このシリーズではまだまだ皆さんにお届けしたい秘蔵映像を配信していきますので、コラムとあわせて引き続きお楽しみいただければ幸いです!
(ライター/花摘マリ)
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