「カラフルな魔女」角野栄子に心惹かれ、ドキュメンタリー映画を制作した番組プロデューサーにその魅力を聞いた

「カラフルな魔女」角野栄子に心惹かれ、ドキュメンタリー映画を制作した番組プロデューサーにその魅力を聞いた

「魔女の宅急便」の作者・角野栄子さんのドキュメンタリー番組を企画・制作した、番組プロデューサー・宮川麻里奈さん。10年ほど前に、あるインタビュー記事から角野さんを知り、「いつか取材したい」と思い続けていたという。4年にわたって密着取材した番組は、大きな話題となり、新たな映像を大幅に加えて構成した映画がまもなく公開される。宮川さんから見た、作家・角野栄子の魅力とは?

世界を見渡してもなかなかいない「そのままで画になる人」

――宮川さんは、NHKでいろいろな番組を制作されてきましたが、ドキュメンタリーを撮ろうと思ったきっかけは何ですか?

宮川:私の30代は、子育てと仕事の両立で慌ただしく過ぎ、40代でプロデューサーになって、「SWITCHインタビュー達人達」という番組を立ち上げました。その後も「あさイチ」や、現在も担当している情報バラエティー「所さん!事件ですよ」などを夢中で作ってきました。いっぽう50歳を目前にした時に、ふと、「地に足がついた、スタイルのある暮らしを見つめるような番組が作りたいな」と思ったんです。

それで誰を取材するか考えをめぐらせていた時に、角野さんが「降りてきた」んですよ(笑)。じつは10年ぐらい前にあるインタビュー記事を読んで、「いつかこの方を取材したい」と胸にしまっていたことを思い出したんです。

――そのインタビュー記事のどこに惹かれたんでしょうか?

宮川:とびきりおしゃれで素敵な方だというのはもちろん、1950年代にブラジルに渡ったというエピソードを読んで、あの時代にブラジルに移住してしまうなんて、何とぶっ飛んだ方だろうと思ったんです(笑)。

――実際にお会いになって、いかがでしたか?

宮川:想像していた以上に素敵な方でした!頭の回転が早くて、お茶目で、ユーモアがあって。お話ししているといつもゲラゲラ笑っちゃうんですよ。人間的に大きくて、嘘がなくて自然体なので、こちらも無理せずにお付き合いできたように思います。

――今回、番組が映画化されましたが、「映画」というのは、最初から考えていたんですか?

宮川:じつは私、この番組を立ち上げるときに、どこか頭の片隅で「将来映画にできたらいいな」っていう気持ちは持っていたんです。だから通常ならNHKのハイビジョンカメラで撮影するところを、あえて4Kで、質感のある映像が撮れるカメラを使って撮り始めたんです。

でもまあ、その時は具体的に映画化するあても何もなかったですし、本当にただの妄想というか、夢というか。ましてや自分が監督をやるなんて思っていなかったんです。

――制作するうえで、番組と映画の違いはありましたか?

宮川:番組ならば放送回ごとに「食」とか、「ファッション」とか、テーマを決めて取材をし、構成を考えていくわけです。でも、映画だと「これを見たら角野栄子という人がよくわかった」という、角野さんの人間像に迫るものでなければいけない、と思いました。だから番組の素材を使うにしても、新たな目で見直して、一から構成しました。


角野栄子さん(右)と娘のくぼしまりおさん(左)

――番組の枠を飛び出して、角野栄子さんの魅力に迫ったということですね。

宮川:じつは、いよいよ映画化が始動するという前に、世界中の高齢の方を主人公にしたドキュメンタリー映画を片っ端から見てみたんです。独特のファッションセンスで有名なおばあちゃまとか、さまざまなジャンルの芸術家とか・・・。その結果、「とにかく角野さんだから大丈夫」と確信しました(笑)。世界を見渡しても、こんなに画になる、どこを切り取っても撮りがいのある被写体はそうそういないぞと。表情豊かでチャーミングで、カラフルなファッションも「いちご色」のご自宅も、角野さん自身のスタイルに貫かれていて、何より心に響く、力のある言葉の持ち主ですから。

――番組や映画を見て、角野さんのようになりたいと思う方は多いでしょうね。

宮川:そういう感想はよく聞きます。「こんな風に年齢を重ねたい」と思う、女性のロールモデルってまだまだ少ないですよね。角野さんを見ていると「こうあらねばならない」にとらわれることなく、「自分の思うように、自由に生きていいんだ」と思えます。角野さんの前向きなオーラを浴びると、明日からの行動が変わるというか、「私も、ちょっと一歩を踏み出してみようかな」と思えるのではないでしょうか。

――最後に番組のファンの方に、一言いただけますか?

宮川:映画を観た方から「番組はいつも見ていたけど、映画は全然別物でした」「角野栄子さんの人間像がものすごくダイレクトに 伝わってきた」と言っていただけて、うれしく思っています。もともと角野さんのファンだった方にも、そうでない方にも、楽しんでいただける映画だと思います。できたら母娘で見ていただきたいな、とも思います。

■プロフィール

宮川麻里奈(みやがわ・まりな)
1970年6月徳島市生まれ。東京大学教養学部卒。1993年NHK番組制作局に入局。金沢局勤務、「爆笑問題のニッポンの教養」「探検バクモン」などを経て、‘13年「SWITCHインタビュー達人達」を立ち上げる。「あさイチ」などを担当した後、現在はNHKエンタープライズで「所さん!事件ですよ」「カールさんとティーナさんの古民家村だより」などのプロデューサーを務める。映画「カラフルな魔女~角野栄子の物語が生まれる暮らし~」は、初監督作品。一男一女の母。

映画「カラフルな魔女~角野栄子の物語が生まれる暮らし~」

「魔女の宅急便」の作者として知られる、児童文学作家・角野栄子の日常に4年にわたって密着したドキュメンタリー番組を基に、新しい映像を大幅に加えて構成した作品。

88歳の角野さんは、自ら選んだいちご色の家に住み、カラフルな服と個性的なメガネを身につけ、毎日を自由に生き生きと過ごしている。「想像力こそ、人間が持つ一番の魔法」と語る角野栄子は、どのような人物なのか? そのパワーの秘密に迫る。

2024年1月26日(金)より公開

語り:宮﨑あおい
監督:宮川麻里奈/音楽:藤倉大
プロデューサー:山田駿平/宣伝プロデューサー:大﨑かれん/編集部協力:岡山智子
ラインプロデューサー:松本智恵/撮影:髙野大樹/編集:荊尾明子/音響効果:河原久美子/監督補:岡澤千恵 

制作:NHKエンタープライズ/制作協力:角野栄子オフィス エネット/映像提供:NHK/製作・配給:KADOKAWA 

ⒸKADOKAWA

映画『カラフルな魔女~角野栄子の物語が生まれる暮らし~』公式サイト
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【関連番組の放送予定】
放送:Eテレ 毎月第1日曜 午後6:00~6:30
再放送:Eテレ 翌月曜 午後1:30~2:00

詳しくは 『カラフルな魔女~角野栄子の物語が生まれる暮らし』番組公式サイト へ

【関連図書】

NHKグループモールでは角野栄子が食をテーマに描く、ショートエッセイ集も販売中!


角野 栄子著 『おいしいふ~せん』 2,035円(税込)


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◆レポート/ライター
亀井惠美子(かめい・えみこ)

東京都生まれ。出版社勤務を経て、フリーの編集・ライターとして活動。主に女性誌やインタビュー記事など。趣味はエンタメ(舞台・ドラマ・映画)鑑賞と、編み物。

         
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