映画「カラフルな魔女」公開記念講座 「角野栄子の毎日を輝かせる魔法」レポート

映画「カラフルな魔女」公開記念講座 「角野栄子の毎日を輝かせる魔法」レポート

Eテレの番組「カラフルな魔女」の映画化を記念した講座「角野栄子の毎日を輝かせる魔法」が、NHKカルチャー青山教室で開催されました。聞き手は、番組プロデューサーで映画監督も務めた宮川麻里奈さん。角野さんのお話を聞ける貴重な機会とあって、会場は満席となりました。その様子をレポートします。

 *映画「カラフルな魔女」公開記念講座の申し込みは終了しました。

目次

  • 角野さんの暮らしには、毎日を楽しく生きるヒントがいっぱい
  • 講座を終えて角野栄子さんからのコメント
  • 角野さんの暮らしには、毎日を楽しく生きるヒントがいっぱい

    昨年の11月に「江戸川区角野栄子児童文学館」(通称「魔法の文学館」)がオープン。そして126日に映画「カラフルな魔女」が公開され、この半年ほどは取材依頼が殺到していたという角野さん。最近になってようやく作家としての時間が戻ってきたといいます。そんな角野さんが、これまでの人生で感じたこと、映画や文学館のことなどを受講者のみなさんからの質問に答えながら語りました。ここでは講座の一部をご紹介します。講座の動画でご覧いただくと、より楽しく暮らすヒントが見つかることでしょう。

    「カラフルな魔女」の撮影を振り返って

    宮川プロデューサーと角野さんは番組で足掛け4年のお付き合い。なんとその間、撮影で雨に降られたことがなかったそうです。

    「台風が直撃するという予報で今度こそダメかと思っても、角野さんを撮影している間だけは雨が降らないんですよね」と宮川さんが話すと、「私、晴れ女なの。それくらいしか自慢できることがないんですよ」と笑う角野さん。そんな和やかな雰囲気で講座が始まりました。

    また映画の中で、角野さんがブラジル在住時代に出会った少年・ルイジンニョさんに60数年ぶりに再会する場面があるのですが、「60数年ぶりですからね、変わりますよね。当時は11歳の、やんちゃで魅力的なイタリア系の少年だったんですけど、今回会ったら「あれ、おじいちゃんだ」と思っちゃって。自分のことは棚に上げて(笑)。」と、再会時のエピソードを笑いを交えて語ってくれました。

    人生での大きな決断。24歳でブラジルへ

    戦時中の少女時代、戦後の青春時代の話が続き、角野さんが結婚後、1959年に夫婦2人でブラジルへ渡った話に。「ブラジルに渡るなど、大きな決断をするときに、大切にしていることは?」という質問には、「その頃の多くの若者はね、どこか行きたくてたまらなかったんですよ」と答えます。海外での生活のワクワク感で、最初は不安などはまったくなかったそうです。でも、ブラジルに到着してからの生活は大変で、日々の食材を買うのもままならず、すっかりふさぎこんでしまったのだとか。

    現地で探した仕事のことなど、どんな経験も明るく話す角野さん。「ブラジルで2年暮らした経験は、どこの国に行っても生きていけるっていう自信になった」そうです。帰国して10年近く後、ブラジルで出会った少年のことを書いた「ルイジンニョ少年/ポプラ社刊」で作家デビューすることになります。

    好きなことを仕事にする楽しさ

    デビュー作で、書くことの楽しさを発見し「一生書いていく」と決意した角野さん。「好きなことを仕事にすることは楽しいのか、辛いのか」という受講者からの質問には、「辛くて嫌になっちゃったことは人間だから多々ありますよね。だけど、本当に好きだったらやっぱり続けていけると思う」と答えます。

    「想像力の源は?」という質問では「何かと出会って、ちょっとした発見をすると、それを絵に描いてみる」と言って、見せてくれたのはいつも持ち歩いているという黒革の手帖。これに思ったことを何でも書くのだそう。

    「私たちの取材の最中に 角野さんが落書きしていらしたのが、何年か経ったら本(ねこぜ山どうぶつ園/金の星社刊)になっていた」と宮川さんが、映画のなかにも出てくるエピソードを紹介すると、「ライオンのオンラインね。名前が気に入っちゃって、登場させたわけ。そういう感じです。深く考えているわけじゃない」と角野さん。「いいかげんでしょ」と、少女のように少し照れながら、「魔女の宅急便」の主人公の名前が「キキ」になった理由など、貴重な創作秘話を次々に明かしてくれました。

    ちょっとこれ書いてみようかなと思って、絵にしてみたという「クリスマスちゃん」。「本当にそういうくだらないことから始まるんです」

    「イコトラベリング1948-/KADOKAWA」に出てくる枝の人型人形も、黒革の手帖から生まれた。

    好きな本を自分で見つける「魔法の文学館」

    「魔法の文学館では、どんな希望を入れましたか」という質問もありました。いちご色が印象的な文学館ですが、色のほかに「本を分類せず、アトランダムに並べる」という点にこだわったそうです。「子どもたちも大人も、自分の目に留まったものを読んでいいっていう風に。(こちらからの)押し付けはしないと思った」と角野さん。来場者の方から本の場所を聞かれても、自分で探すように言ってほしいとお願いしたそうです。

    魔法の文学館へ行かれる方は、「自分の好きな本」を見つける宝探しをぜひ楽しんでください。

    講座を終えて角野栄子さんからのコメント

    今日はたくさんの方に来ていただいて、年齢層もさまざまだったようですね。いくつになっても、また新しい扉が開くわけだから、生き生きと暮らしていただきたいなと思います。私のあんなお話で申し訳ないような気もしましたが、みなさんよく聞いてくださり、本当に心強い味方がたくさんいるんだなって思ってうれしくなりました。

    映画「カラフルな魔女~角野栄子の物語が生まれる暮らし~」

    「魔女の宅急便」の作者として知られる、児童文学作家・角野栄子の日常に4年にわたって密着したドキュメンタリー番組を基に、新しい映像を大幅に加えて構成した作品。

    88歳の角野さんは、自ら選んだいちご色の家に住み、カラフルな服と個性的なメガネを身につけ、毎日を自由に生き生きと過ごしている。「想像力こそ、人間が持つ一番の魔法」と語る角野栄子は、どのような人物なのか? そのパワーの秘密に迫る。

    2024年1月26日(金)より公開

    語り:宮﨑あおい
    監督:宮川麻里奈/音楽:藤倉大
    プロデューサー:山田駿平/宣伝プロデューサー:大﨑かれん/編集部協力:岡山智子
    ラインプロデューサー:松本智恵/撮影:髙野大樹/編集:荊尾明子/音響効果:河原久美子/監督補:岡澤千恵 

    制作:NHKエンタープライズ/制作協力:角野栄子オフィス エネット/映像提供:NHK/製作・配給:KADOKAWA 

    ⒸKADOKAWA

    映画『カラフルな魔女~角野栄子の物語が生まれる暮らし~』公式サイト
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    【関連番組の放送予定】
    放送:Eテレ 毎月第1日曜 午後6:00~6:30
    再放送:Eテレ 翌月曜 午後1:30~2:00

    詳しくは 『カラフルな魔女~角野栄子の物語が生まれる暮らし』番組公式サイト へ

    【関連図書】

    NHKグループモールでは角野栄子が食をテーマに描く、ショートエッセイ集も販売中!


    角野 栄子著 『おいしいふ~せん』 2,035円(税込)

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    ◆レポート/ライター
    亀井惠美子(かめい・えみこ)

    東京都生まれ。出版社勤務を経て、フリーの編集・ライターとして活動。主に女性誌やインタビュー記事など。趣味はエンタメ(舞台・ドラマ・映画)鑑賞と、編み物。

             
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