奄美大島で独自の日本画を描き、「日本のゴーギャン」とも呼ばれる孤高の画家・田中一村。奄美大島の自然を愛し、昭和期に活動していた日本画家です。
本記事では、元田中一村記念美術館顧問、田中一村研究の第一人者である大矢鞆音氏が、田中一村のことについてご紹介します。
田中一村(たなか いっそん)※田中一村記念美術館より抜粋 |
田中一村のこと
「若冲と一村」を陳べた展覧会が、今箱根の『岡田美術館』で開かれています。思えば隔世の感ひとしおです。田中一村という名を初めて目にし、耳にしたのは、1,985(昭和60)年12月のNHK日曜美術館でした。
無名の田中一村をその番組の中で、岡田美術館の館長となった小林忠さんが「若冲と一村」が極めて似ているということを語っていました。全く無名の画家を取り上げることが珍しい時代に、奄美大島で、人知れず描き、この世を去った田中一村を取り上げたのです。
作品はクローズアップされ、音楽がかぶり、人々の五感にしみいる様に伝わりました。田中一村は一躍脚光を浴びたのです。私も初めて知った画家でした。私の父とまさに同じ時代を生きた画家です。私は編集者として直ちに『田中一村作品集』をつくり、以来40年近く田中一村の足跡を訪ね、田中一村の紹介に携わってきました。南画から出発した田中一村が、50歳を目前に奄美に渡り、墨の美しさを生かしながら、≪南の琳派≫とも言える、つややかな、華麗な作品を残したのです。
東山魁夷、橋本明治、加藤栄三といった昭和の画壇を代表する画家たちと2か月ほどではあったが、東京美術学校で同級生であったことも付け加えたいと思います。
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◆ライター
大矢鞆音
安野光雅美術館館長・美術評論家
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田中一村記念美術館の館長を務める宮崎緑さんに奄美と一村作品の魅力、回顧展の見どころなどを聞きました
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