世界と出会う、日本の美術
大阪・関西万博が開催されるのを機に、古今東西の芸術文化の交流から生まれた日本美術の至宝が一堂に会します。
古くから、日本列島では海を介した往来によって異文化がもたらされ、その出会いのなかでさまざまな美術品が創り出されてきました。その作品のひとつひとつが豊かな交流の果実であり、いうなれば、日本という「るつぼ」のなかで多様な文化が溶け合って生まれた奇跡なのです。
本展は、弥生・古墳時代から明治期までの絵画、彫刻、書跡、工芸品など、国宝、重要文化財を含む約200件の文化財を厳選し、日本美術に秘められた異文化交流の軌跡をたどります。
見どころ
◆交流を軸にとらえなおすと見えてくる、あの名品の新たな横顔
19世紀末、欧米で万国博覧会が華やかなりしころ、西洋人が抱いた日本美術のイメージは、安価な輸出工芸品や骨董品を基にしていました。もっと立派に見られたい一心から、明治政府は、日本の独自性を強調した官製の日本美術史を整えます。国宝や国立博物館といった制度は、まさにこの枠組みを受け継ぐものですが、私たちに伝えられた品の多くはむしろ、様々な文化がるつぼの中で溶け合うことで生まれたものであることを、自ら物語っています。世界に見られた日本美術、世界に見せたかった日本美術、世界と混じり合った日本の美術という視点の冒険を、名品を通して体験しましょう。
◆出展総数約200件、巡回なしの京都限定開催
国宝18件、重文53件を含む約200件の作品を通じて、日本美術の多様性に出会いましょう。
※国宝、重要文化財を含めた出展件数は増減する可能性があります。
主な展示作品
◆富嶽三十六景 神奈川沖浪裏、凱風快晴、山下白雨
葛飾北斎画 江戸時代 天保2年(1831)頃 山口県立萩美術館・浦上記念館所蔵
[前期展示 ※後期は和泉市久保惣記念美術館所蔵品を展示]
富嶽三十六景 神奈川沖浪裏
富嶽三十六景 凱風快晴
富嶽三十六景 山下白雨
ゴッホが激賞し、ドビュッシーの交響曲からクローデルの彫刻にまで波及した「ビッグ・ウェーブ」こと「神奈川沖浪裏」は、今日にいたるまで北斎のアイコンであり続けています。19世紀後半、ジャポニスムの隆盛にともない西欧において不滅のものとなった北斎の名声は、近代日本における北斎評価にも多大な影響を及ぼしました。
◆国宝 風神雷神図屏風
俵屋宗達筆 江戸時代 17世紀 京都・建仁寺所蔵 [通期展示]
今や誰もが知る国宝ながら、江戸時代における消息は定かでなく、本作の存在が広く知られるようになったのは明治時代後半になってからのことです。先んじて西欧で高く評価されていた尾形光琳、そして酒井抱一へと連なる琳派概念の形成は、近代国民国家として歩み始めた日本が必要とした「伝統の創出」でもありました。
◆重要文化財 突線鈕五式銅鐸
滋賀県野洲市小篠原字大岩山出土 弥生時代 1~3世紀 東京国立博物館所蔵 [通期展示]
高さ134.7㎝、重さ45.5㎏と、現存する日本最大の銅鐸です。吊り手は幅広で、飾り耳とよばれる装飾がついており、吊り下げて鳴らす鐘としての機能を失い、据え置いて見る銅鐸へと変容していることがわかります。本品は銅鐸のなかでも最終段階のものであり、『Histoire de l'Art du Japon』には日本の初期の美術における金工の代表例のひとつとして掲載されています。
◆国宝 宝相華迦陵頻伽蒔絵𡑮冊子箱
平安時代 延喜19年(919) 京都・仁和寺所蔵 [通期展示]
この箱の蓋には、空海が唐から持ち帰ったお経を納める箱、と蒔絵で書かれています。空海の死後、散逸の危機にあった貴重な経典を、醍醐天皇が集めさせてこの箱に納めました。文様は、唐の影響が濃厚な正倉院宝物のように求心的に整然と配置される一方で、極楽浄土で仏法を囀るという霊鳥、迦陵頻伽の顔立ちは和風で、踊ったり楽器を奏でたり、全員がちがう姿をしています。
◆重要文化財 宝誌和尚立像
平安時代 11世紀 京都・西往寺所蔵 [通期展示]
宝誌和尚は中国南北朝時代の僧で、予言や神異を行い、観音の化身として信じられました。この不思議な造形は、面を裂き観音の姿をあらわしたという説話に基づくものです。宝誌の姿は奈良時代に中国から伝わったと考えられ、本像は日本で現存唯一の作例です。
◆唐物茄子茶入 付藻茄子
中国・南宋~元時代 13~14世紀 東京・静嘉堂文庫美術館所蔵
[前期展示/後期は同館所蔵《唐物茄子茶入 松本茄子(紹鷗茄子)》を展示]
足利義満、義政をはじめとした足利将軍家が愛蔵し、次々と所蔵者が変わり、ついには織田信長、豊臣秀吉といった天下人が手にするなど、広く名物茶器として知られた唐物の至宝。大坂夏の陣で被災し、焼け跡から発見された時にはひどく破損していましたが、丹念な漆の修繕により奇跡の再生を果たし、現在にまで受け継がれました。
◆クリス
インドネシア 16~17世紀 京都・石清水八幡宮所蔵 [通期展示]
クリスとは、現在のインドネシアとマレー半島の周辺で広く用いられてきた伝統的な短剣。本品は、日本にいつどのようにもたらされたのか不明ですが、石清水八幡宮にて宝珠など、雨乞いの修法に関連した品とともに発見されました。蛇行する形状から発想を得て、雨乞いに用いられた可能性が想定されます。
展覧会概要
- 展覧会名:大阪・関西万博開催記念 特別展「日本、美のるつぼ―異文化交流の軌跡―」
- 会期:2025年4月19日(土)~6月15日(日)
[主な展示替]
前期展示:4月19日(土)~5月18日(日)
後期展示:5月20日(火)~6月15日(日)
*会期中、一部の作品は上記以外にも展示替を行います。 - 会場:京都国立博物館 平成知新館【東山七条】
- 開館時間:午前9:00~午後5:30
*金曜日は午後8時まで(入館は各閉館の30分前まで) - 休館日:月曜日
*ただし、5月5日(月・祝)は開館、5月7日(水)は休館。 - 主催:京都国立博物館、朝日新聞社、NHK京都放送局、NHKエンタープライズ近畿
- 後援:公益社団法人2025年日本国際博覧会協会
- 協賛:クラブツーリズム、京阪ホールディングス、ダイキン工業、大和ハウス工業、竹中工務店、NISSHA
- お問い合わせ:075-525-2473(テレホンサービス)
▼大阪・関西万博開催記念 特別展「日本、美のるつぼ―異文化交流の軌跡―」公式サイト
https://rutsubo2025.jp/index.html
◆俵屋宗達の国宝「風神雷神図屏風」、初めてのフィギュア化が決定!
特別展「日本、美のるつぼ」限定 大本山 建仁寺公認 風神雷神フィギュア
(国宝「風神雷神図屏風」俵屋宗達筆 京都・建仁寺所蔵)
可動フィギュアやカプセルフィギュア、さらにはこの俵屋宗達の作を模写した「尾形光琳筆 風神雷神図屏風」など、これまでにも数多く「風神雷神」を立体化してきた海洋堂が、最新アップデートとして挑んだ国宝「風神雷神図屏風」展覧会限定フィギュアです。日本画の真髄と進化した立体造形のコラボレーションをお手元でお楽しみください。
※本展開催を記念して、会期中に限り数量限定で販売いたします。
※数量、販売価格については後日改めて発表します。
◆2025年春は、京都と奈良、二つの国立博物館で日本美術が熱い!
同一会期で奈良国立博物館130年記念 特別展「超 国宝―祈りのかがやき―」を開催。こちらもチェックしてみてください。
【見どころをご紹介】