お城を訪ねる際に必見!城マスター・千田嘉博先生に聞いてみた!お城の魅力

お城を訪ねる際に必見!城マスター・千田嘉博先生に聞いてみた!お城の魅力

こんにちは千田です。中学1年の夏休みに、駅から眺めた姫路城が好きになりまして、それ以来ずっとお城の研究をしています。最近では『日本最強の城スペシャル』や『絶対行きたくなる!ニッポン不滅の名城』にも出演して、お城の魅力を全国の皆さんにお伝えしながら、お城から歴史を読み解く楽しさを広げていきたいと思っています。

日本列島には、いわゆる侍が作ったお城だけではなく、沖縄や南西諸島には「グスク」という城や、北海道を中心にアイヌの人々が作った「チャシ」など、3種類のお城がありました。しかも、それぞれのお城が同時期に存在していたというのは、世界の中で見ても非常に大きな特色で、実際に今でもそのお城を尋ねることができます。

北海道網走市 桂ヶ岡チャシ

沖縄県中城村 中城城


Q:千田先生はいつも楽しそうにお城のお話をされていますが、お城の魅力ってなんですか?

お城を訪ねると、そのお城をどういう風に作っていたのか、五感を使って体感できるんですよね。現地を訪ねる城歩きというのは、「この堀は深いなあ」とか「この石垣はすごく高いなあ」と、五感で体感しながら歴史を感じていく。実物を通じて、自分自身で考えることをできるのがすごく魅力だと思います。自分自身で本物の石垣や堀、あるいは天守や櫓(やぐら)を体感して、当時の様子を考えられる、他にはなかなかないお城を勉強する、お城に感心を持っていろんな所を訪ねると、楽しさがどんどん深まります。

お城というのは、それぞれの時代にその地域の中心としての役割も持っていたので、お城ごとにいろいろな文化や特色があります。そこに行ったらおいしいお饅頭やご飯、お酒があるといったように、いろんな楽しみ方があるので、そこもまたお城を歩きながら積極的に体感してくださったらと思います。


Q:先日ヨーロッパのお城にも行かれてましたが、日本との違い、また逆に同じだと感じたことはありますか?

ドイツ マルクスブルク城

実はヨーロッパと日本のお城って、共通する点もいっぱいあるんですね。たとえば、弓矢などを効果的に使いながら守る所を日本では「狭間(さま)」と言いますが、ヨーロッパでは「アロースロープ」や「アロースリット」と言われていて同じ仕組みでした。櫓(やぐら)に関しても、敵の正面だけではなく側面に対して弓矢を効果的に射掛けるために建てる所が城壁から少し外に張り出していました。この点も実は共通していて、違うところばかりではありません。

門の扉の上の所などは、日本では「石落とし」と呼ぶ、真下に来た敵をやっつける守りの装置を使います。この石落としも、ヨーロッパでは「マチコレーション」と呼ぶ同じ装置が存在し、お城をどのように守っていくかという点で共通点があります。ヨーロッパのお城を見ていると日本と同じ事を考えていたんだと発見できて楽しいです。

ただし、ヨーロッパでは、大きな大砲などを日本よりも早く使い始めました。それまでヨーロッパのお城というのは、城の中央に高い塔がそびえている、私たちがイメージするような中世の騎士のお城がたくさん作られていました。しかし、それでは大砲の標的にされてしまうため、低くて厚い城壁を備える要塞が作られるようになります。そういう要塞は貴族が暮らしにくいため、街の真ん中に宮殿が作られて分化していった点は、日本では起きなかった大きな違いです。

日本のお城は、大阪冬の陣や島原の乱で大砲が使われ、大きな効果を挙げたというのが分かりますが、日本のお城のほとんどは大砲が主たる兵器になる前に作られ、江戸時代になって戦いの無い平和な時代を迎えました。天守が中央にそびえて、町のシンボルや戦いの拠点、政治の拠点としても機能するという、要塞と宮殿に枝分かれする前の本当にギリギリのところで留まったのが、日本のお城だったのです。

日本のお城がどうしてこんなに魅力的で美しいのかという謎の答えを、ヨーロッパのお城の発展や変化を辿って比較して、世界の人類の中で日本のお城は奇跡の存在だと分かったのです。日本の城を理解するために、国際的な視点から考えるのはとても重要です。ヨーロッパのお城を訪ねて改めて実感しました。

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お城への愛がたっぷり詰まった千田先生のインタビュー。みなさまもぜひ、魅力あふれる名城めぐりをしてみてはいかがでしょうか

そして最強の「城マスター」こと千田嘉博先生が、今年も最強の城講座を開催します。NHKグループモールでは生配信も!どうぞお楽しみに。

■千田嘉博の最強の城講座「信長・秀吉・家康をつなぐ城」

 

  • 講座名:千田嘉博の最強の城講座「信長・秀吉・家康をつなぐ城」
  • 講師:千田嘉博(城郭考古学者)
  • 開催日時:2023年8月19日(土)19時~20時30分予定
  • オンライン受講(ライブ配信):8月19日(土)19時~20時30分予定
  • 主催: NHKカルチャー(NHK文化センター)
  • 開催場所:NHKカルチャー青山教室(東京都港区南青山1-1-1新青山ビル西館4F)
  • 講座料:対面受講:NHK文化センター会員 3,432円、一般4,125円(税込)、オンライン受講:2,200円(税込)
*配信は終了いたしました


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【2月5日まで】「千田先生と行く!日本最強で不滅の城ライブ」期間限定で再配信!

 

■プロフィール

千田 嘉博さん
千田 嘉博さん
城郭考古学者・奈良大学教授・名古屋市立大学特任教授  
1963(昭和38)年、愛知県生まれ。城郭考古学者、大阪大学博士(文学)。現在、奈良大学文学部文化財学科教授。中学生の夏休みに姫路城を遠望して感動し、日本と世界の城の探検をはじめる。2015年に濱田青陵賞受賞。主な著書に『戦国の城を歩く』(ちくま学芸文庫)『信長の城』(岩波書店)『城郭考古学の冒険』(幻冬舎新書)などがある。

         
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