「スローバラード」「雨あがりの夜空に」などのヒット曲で知られ、「キングオブロック」の異名を持つ伝説のロックバンド・RCサクセション。2022年、デビュー50周年プロジェクトの一環として1981年に開催された初の武道館ライブのデラックス・エディションが発売された。
その発売を記念して今年5月に全国4か所のライブハウスで爆音上映会を開催。先端技術で美しく蘇った当時のライブ映像にファンたちは熱狂した。反響を呼んだRCサクセション初の武道館ライブに、彼らの人気を不動のものにした1983年の渋谷公会堂ライブも加えた豪華な2本立てのライブ映像が8月6日に配信される。
今年5月にNHK-BSの音楽番組「伝説のコンサート」でRCサクセションのライブ映像が放送されて話題になった。今回同番組のチーフ・プロデューサー原田秀樹さんにインタビュー。今回配信される映像制作に携わった原田さんに見どころや当時のRCサクセションが音楽シーンに与えた影響などを聞いた。
――ライブハウスで開催された爆音上映会に足を運んだそうですね。
原田:本当に感動しました。もうRCサクセションは忌野清志郎さんがいないわけだから再結成はできないわけじゃないですか。40年前のあのRCサクセションが目の前で甦るような感覚を味わいましたね。メンバーたちが生き生きとライブでパフォーマンスする姿が非常にリアルでした。
映像はライブハウスの大きなスクリーンで見てもぜんぜん遜色ないほど鮮明で迫力がありました。爆音上映会というだけあって、響震するような感じで音圧が届くんですよ。ドラムの新井田耕造さんが太鼓を叩くたびにハコ鳴りもしていましたね。もう録音物とか収録物みたいなものではなかったです。生演奏を目の前で見ているような感じでした。会場の音響担当の方々もどうやったら一番効果的に音が届くかというのをすごく調整されていたと思います。
――40年前にタイムスリップしたような感覚でしょうか。
原田:時空を超えて1981年の武道館と2022年の六本木がつながっちゃうみたいな感じでしたね。会場では声を出して歌えないので合唱にはならなかったですけれども、集まったファンの方々は明らかに心の中で歌っているんですよ。そういうのが伝わってきたのも感動的でした。ただ古いものを懐かしむためのイベントではなかったような気がします。
当時のRCサクセションの表現に対するモチベーションやパフォーマンスの精度の高さであるとか、楽曲の良さ。キャラクターの絶妙なアンサンブルであるとか…そういったものが頂点に達していた瞬間をとらえていましたね。あの瞬間は日本のライブエンターテイメントの歴史を変えた瞬間といってもいいかもしれません。
――当時のライブの映像は映像技術NEPビデオレストアサービスで甦らせたそうですね。どのような行程で仕上げていくのでしょうか。
原田:40年前の映像を現在の2K、4Kにすると画像が粗くなってぼやけてしまうんですね。そのぼやけた箇所、写真でいうと画素数ですが、その粗いところを丁寧に描き足して埋めていく作業を行います。たとえば歌手の髪の毛の部分だったら、当時の映像そのままだと粗くてギザギザになってしまいます。そのギザギザの部分を埋めてあげることで髪の毛の曲線がなめらかに表現されるんですね。
それと強い照明が入ってくると残ってしまう光の跡を消したり、色の調整を施したりして鮮やかな色味やコントラストを表現していく。ノイズの除去も行いますね。ひとコマずつきめ細かい作業を経て、今の時代で鑑賞に堪える美しい映像に仕上げています。
――RCサクセションは日本のロックシーンに大きな影響を与えたそうですね。
原田:RCサクセションは当時“キングオブロック”と呼ばれていました。バンドのファンだった世代って50代、60代の方だと思うんですけれども、ロックコンサートの楽しみ方ってそんなに知られていなかったんですね。恥ずかしがってアクションを起こせないとかいろいろあったと思うんですよ。
ロックが一般的なものじゃなかった時代に普通の学生がコンサートに行って大声で歌ったり、叫んだり、立ち上がってステージと客席が一体になって盛り上がる。RCサクセションはそういうコンサートのスタイルをホールやアリーナレベルでやった最初のアーティストと言ってもいいと思うんです。
今の日本のロックバンドがやる演出のルーツってRCサクセションにあると思うんですよね。たとえば今ではライブの定番になっているコール&レスポンス。昔はそんな演出はなかったのでやっていませんでした。コンサートの楽しみ方の作法を確立したんですね。
ビジュアルや衣装とかステージの演出もそうだし、楽曲の構成も全部自分たちでクリエイトして発信しているというのも魅力的でした。ステージの上で走ってふざけまわってコントチックなことまでやっていましたし。バンドの求心力がとにかく強かったのでどんどん伝播していって…。その後の世代のミュージシャンたちに広まっていったと言ってもいいんじゃないでしょうかね。
――今回配信されるライブ映像の見どころはどこでしょうか。
原田:普通の学生がロックコンサートに行くと不良みたいな言い方をされていた時代に、ロックを非常にポップなものに転換させていったのが80年代初頭のRCサクセション。そのRCが全国規模で日本の音楽シーンに今までになかったロックを広げていった象徴的なライブが1981年の最初の武道館ライブだと思うんですね。
清志郎さんが客席をあおったりするステージングの根幹にあるのは、60年代のリズム&ブルースとかソウルミュージック。我々が清志郎さんの音楽の確固たる背骨みたいなもの、ルーツミュージックはなんだろうといろいろ古い音楽を調べれば調べるほどその奥には深くて豊かなものが流れていたりして。音楽の楽しみ方も教えてくれました。
この武道館ライブのセットリストは“ザ・ベストオブRCサクセション”みたいな感じのセレクションになっています。1981年の初の武道館ライブには日本の音楽シーンに革命を起こしたRCサクセションがすごくわかりやすく詰まっていると思います。
◆プロフィール
原田秀樹(はらだひでき)
(株)NHKエンタープライズ 第4制作センター エンターテインメント部 部長
1990年NHK入局
プロデューサー/ディレクターとして音楽番組などの制作に携わる
おもな担当番組「紅白歌合戦」「SONGS」「うたコン」「シュガー&シュガー」「ワルイコあつまれ」など
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