気温が高いうえに日差しも強い夏。
盆栽を育てる場合は慎重なお手入れが欠かせません。
しかし、盆栽を育てはじめたばかりの方や、初めての夏を迎える方にとっては、どのようにお手入れをしたらよいのかわからないかと思います。
盆栽は種類ごとにお手入れの仕方が異なります。
例えば、人気が高い松柏の場合は、水やりの頻度を変えたり芽切りをしたりしなければなりません。
そこでこの記事では、はじめての夏を迎える盆栽初心者向けに、盆栽の夏の間のお手入れ方法を解説します。
目次
1. 夏には夏のお手入れ方法がある
2. 初心者に人気な松柏類盆栽のお手入れ方法
2-1. 松柏類の盆栽とは?
2-2. 松柏類盆栽の日除けについて
2-3. 松柏類盆栽の水やり・防虫対策について
2-4. 芽切りについて
3. 雑木類の盆栽のお手入れ方法
3-1. 雑木類とは?
3-2. 葉もの・実もの・花ものそれぞれのお手入れ方法
3-3. プロが教える盆栽のお手入れ講座
夏には夏の盆栽お手入れ方法がある
盆栽は季節にあったお手入れ方法が必要です。
夏の場合だと、日差しが強く気温が高くなりやすいため、日除け対策をおこなったり、土が乾かないよう水やりを増やしたりなどが必要です。
なお、近年は5月ごろから気温が上昇して、真夏のような陽気になる場合も少なくありません。
気温や日差しが著しく高くなる日は、状況に応じて水やりの回数を増やしたり日陰に盆栽を移動させたりすることも必要です。
初心者に人気な松柏類の盆栽のお手入れ方法
盆栽にはいくつか種類がありますが、その中でも特に人気が高く、初心者でも育てやすいのが松柏類です。
ここでは、夏の間における松柏類盆栽の育て方を解説します。
松柏類の盆栽とは?
そもそも松柏類の盆栽とは、マツやスギ、ヒノキ、イチイなどの針葉樹類の盆栽のことを指します。
常緑樹であるため年間通して緑を楽しむことがでることからとても人気が高いです。
いくつか品種がありますが、特に以下の3つは丈夫で育てやすく、初心者にもおすすめです。
- アカマツ
- クロマツについて
- ゴヨウマツ
松柏類盆栽の日除けについて
品種にもよりますが基本的には日当たりがよい場所を好むものが多いため、日なたで育てるのがよいでしょう。
ただ、先ほど紹介したアカマツやゴヨウマツは日差しが強い場所を苦手としているので、半日陰の場所が好ましいです。
クロマツは日差しを好むため、年間を通して日当たりがよい場所で育てましょう。
松柏類盆栽の水やり・防虫対策について
松柏類盆栽の場合、どのくらい水が必要なのかは品種によって異なります。
例えば、ゴヨウマツの場合は乾いている時間を長くすることが必要です。
しかし、アカマツ・クロマツについては夏の間は1日3回の水やりが必要です。
また、松柏類盆栽は葉を食べる虫(アブラムシやケムシ)がついてしまったり、病気になってしまうこともあるので、年間を通して月に1回は殺菌・殺虫剤の散布をしましょう。
芽切りについて
松柏類盆栽の中には放っておくと枝葉が伸びて大きくなってしまうものがあるため、「芽切り」をおこないます。
芽きりとは、葉の中心から伸びてきた芽を葉の元で切る作業で、芽を切り直すことで新しく芽ができ、それらが11月頃までに小さく育つことで、短い枝姿を保つことができます。
ただし、松柏類盆栽だからといって必ずしも芽切りが必要になるわけではありません。
例えば、アカマツ・クロマツは芽切りが必要ですが、ゴヨウマツは芽切りをおこないません。
芽切りが必要かどうかは事前にチェックしておきましょう。
芽切りの時期
芽切りはだいたい6月頃からおこないますが、盆栽の大きさによって適した時期が違っています。
大きな盆栽は6月ごろから始めるとよいですが、小さい盆栽の場合は7月頃、ミニ盆栽は7月半ばに作業をするのがよいでしょう。
また、気候によっても始めるタイミングは異なります。
寒いところに住んでいる場合は、小さい盆栽やミニ盆栽でも6月頃から芽切りをしましょう。
芽切りの方法
前の年の葉(古葉)から枝が伸びているので、芽切りでは古葉の根元から枝を切っていきます。
どのくらい枝を切るかは木の位置によって異なります。
木の上の方に古葉が多いと上の方だけ枝が多くなってしまってバランスが悪くなってしまい、不恰好な見た目に。
バランスを整えるためにも、上の方は古葉を3枚残すくらいにとどめ、逆に下の方は古葉を5枚ほどにするよう切っていきます。
その際、伸びが弱い場合は芽切りをせず残しておくようにしましょう。
芽切り後の管理
肥料があると芽が間延びしてしまうため、夏の間は肥料を与えず、9月〜10月ごろになったら肥料を与えるようにしましょう。
また、芽切りが終わったら日当たりがいい場所で管理することが大切です。
ただし、その際に満遍なく光が当たるようにするため、2週間に1回ほど位置を変えるのがおすすめです。
水やりについては、土の渇きが減るので1回分減らします。
水をあげる際には土が乾いているかどうか、確認してからおこなうことが大切です。
雑木類の盆栽のお手入れ方法
盆栽の種類は松柏類だけではありません。
他にも雑木類と呼ばれる盆栽もあります。
雑木類とは?
雑木類とは、柏類以外の木本植物の盆栽のこと。
雑木類の盆栽としては、ケヤキ・ウメ・クチナシ・イチョウ・サクラ・ヤマアジサイ・モミジ・ロウヤガキなどが挙げられます。
このうち、ケヤキやモミジなどのように実や花がつかないものは葉もの、ロウヤガキのように実を付けるものは実もの、ウメやサクラなどのように花を咲かすものは花ものと呼ぶこともあります。
雑木類の盆栽の多くは、異なり限られた季節しか緑や花、実を楽しめないからこそ、季節の移り変わりがより感じられる盆栽となっています。
【盆栽の分類 参照】https://www.bonsaichie.com/
葉もの・実もの・花ものそれぞれのお手入れ方法
雑木類はそれぞれ種類によって夏の間のお手入れ方法が異なります。
ここではそれぞれのお手入れ方法を解説します。
葉もの盆栽のお手入れ方法
葉もの盆栽の多くは、直射日光に弱く、強い日差しや熱風にあたり続けると葉焼けしやすい傾向があります。
そのため、夏の間は日が当たる場所ではなく、寒冷紗やすだれを使って日差しを和らげてあげましょう。
また、水やりについては、夏だと2〜3回が望ましいです。
土が乾きやすくなっているので、たっぷりと水を与えましょう。
さらに、木というのは葉が多ければ多いほど枝の太さが太くなるので、伸び放題のままにすると冬に葉が落ちた時にあまり美しくない見た目の盆栽になってしまいます。
そのため、梅雨に入ったら葉を全て取り除く作業である「葉刈り」をおこなって、枝が太くなりすぎないように木の力を抑制する必要があります。
葉刈りの方法はとても簡単です。
木が動かないよう片方の手で鉢を押さえて、もう一方の手で葉を掴んで軽く引っ張ります。
葉を取るのが難しい部分はピンセットを使うと良いでしょう。
葉刈りをしてしばらくすると、また葉が出てきます。その際は再度葉刈りを行います。
だいたい梅雨が明ける前に2〜3回ほど葉刈りをおこないましょう。
ただ、葉刈りは木にとってとてもストレスがかかるものです。
そのため、葉刈りをするのは葉の緑が濃い元気な盆栽のみにしましょう。
葉の色が黄色っぽい場合は肥料不足の恐れがあるので、肥料を与えて元気になってから葉刈りをします。
葉刈りが終わったら今度は、枯れている枝を剪定します。
例えば、白くなっている枝や触ると折れる枝、樹脂がシワシワになっている枝を剪定しましょう。
また、剪定ではいらない枝も切ります。
木の枝は二股に分かれているのが美しいとされているので、1ヶ所から2本以上の枝が出ている場合は枝を切って本数を整えます。
例えば、こちらは正面から見て4本の枝が出ています。
この場合は下2本の枝を切ります。
余分な枝を切る場合は、枝の根元から切りましょう。
枯れている枝や余分な枝が切れたら、飛び出してしまっている枝を切り、盆栽全体の形を整えれば完了です。
葉刈りが終わった後は、肥料を一時的に取り除き、殺菌・殺虫剤などをかけておきましょう。
花もの・実もののお手入れ方法
花もの・実ものの盆栽は6月から8月にかけて、葉や茎が大きく成長して花になる芽を作る「花芽分化」をおこなうため、しっかりと日に当てることが重要です。
ただ、葉ものと同様、日差しが強すぎると葉焼けを起こしてしまうため、寒冷紗やすだれを使って日差しを和らげるとよいでしょう。
また、水やりについても夏の間は2〜3回が望ましいです。
【水やり回数の参照】https://www.bonsaichie.com/entry/2018/08/04/215020
プロが盆栽のお手入れ方法を解説
夏の間は芽切りや葉刈りなど、盆栽ごとに適したお手入れ方法が欠かせません。
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ぜひ、盆栽を育てている方はチェックしてみてはいかがでしょうか。