城マスター・千田嘉博先生が解説!最強の城講座「信長・秀吉・家康をつなぐ城」レポート

城マスター・千田嘉博先生が解説!最強の城講座「信長・秀吉・家康をつなぐ城」レポート

NHKのテレビ番組『日本最強の城スペシャル』などでおなじみの城郭考古学者・千田嘉博先生による『最強の城講座「信長・秀吉・家康をつなぐ城」』がNHKカルチャー青山教室で開催されました。今回は織田信長が築城し、豊臣秀吉と徳川家康が対決した「小牧・長久手の戦い」で大きな役割を果たした小牧山城を中心に解説。「城マスター」こと千田先生が発掘調査で次々と明らかになった驚きの事実を交えながら、小牧山城や岡崎城、清州城など信長・秀吉・家康の三英傑にまつわる城の魅力を語りました。


目次

1. 秀吉vs家康「小牧・長久手の戦い」のカギとなった城・小牧山城
2. 石垣からわかってきた小牧山城の真実
3. 石垣愛が爆発!千田先生の石垣観賞会
4. 城下町の基礎ともなった小牧山城
5. 城にポイントを置いて「小牧・長久手の戦い」を解説
6. 千田嘉博先生コメント

■千田嘉博の最強の城講座「信長・秀吉・家康をつなぐ城」詳細
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1.  秀吉vs家康「小牧・長久手の戦い」のカギとなった城・小牧山城

千田先生は信長風の陣羽織姿で登場。会場に集まった親子連れから年配の方まで幅広い層の受講生が大きな拍手で迎えました。翌日には大河ドラマ『どうする家康』で秀吉と家康が対決する第32回「小牧長久手の激闘」を放送。ちょうどドラマの中で家康が本陣を敷いている「小牧山城」にスポットを当てました。

小牧山城は織田信長が初めて築いた城で、美濃の稲葉山城を攻略するまで4年ほど居城。その17年後に徳川家康が豊臣秀吉と対峙した小牧・長久手の戦いで小牧山城を本陣とし、圧倒的な秀吉軍に奇跡の勝利をおさめるカギとなった城です。

ここ2030年で行われた発掘調査により、小牧山城が信長や家康の城づくり、今後広がる城下町形成につながる転機となる重要な城だということが判明。信長が4年という非常に短い期間しか居城しておらず、古文書などの史料の詳細な記録もなかったため、城の評価が遅れたのではと解説しました。


2. 石垣からわかってきた小牧山城の真実

江戸時代に尾張藩は、家康が秀吉と戦って勝利した場所として小牧山への立ち入りを禁止して保護しました。昭和になって小牧市が国史跡内に市役所や学校を建設するなどして破壊したところもありますが、史跡整備のために小牧山城を発掘してわかった衝撃的な事実の数々を解説しました。

家康が小牧・長久手の戦いの際に作らせた土塁の中から石垣が発掘されたことで、今まで土造りの城だと考えられていたことが覆り…。信長が小牧山城を短期間の居城を目的とした「砦」としてではなく、当時最先端技術の石垣を取り入れた本格的な居城としてつくったことが明らかに。

 

3. 石垣愛が爆発!千田先生の石垣観賞会

発掘された小牧山城本丸石垣の表面(写真提供:千田嘉博)

小牧山城の石垣は信長にとって初の石垣。発掘された石垣の写真を多数並べながら、「いい石垣ですね~」としばし、石垣鑑賞会タイムも。石垣(築石)の背後にある栗石層、石垣の隙間に詰める間詰め石など、石垣の構造を説明しつつ、石垣を楽しむ観賞ポイントも。石垣にこだわった武将の話から、加藤清正が作った熊本城の石垣の美しさも解説しました。

本丸に続く大手道もきわめて先進的と絶賛。山麓から山腹まで直線の大手道の先に天守がそびえているところは、後に信長が居城とする安土城とそっくりであることも指摘しました。小牧山城の段階から城を自分の権威や権力を象徴するものとしていた信長。小牧山城がいかに画期的で後の城につながっていく要素がたくさんあることを話しました。

 

4. 近世城下町の基礎になった小牧城下町

長い間「砦」として見られていたため、城下の町もないと思われていた小牧。発掘調査で「城」として画期的だったことが明らかになり、さらに全国の近世城下町の源流となっていたことも判明。20代の千田先生が調査した小牧城下町の地図などを参照しながら、丁寧に説明しました。

5. 城にポイントを置いて「小牧・長久手の戦い」を解説

講座の翌日に大河ドラマ『どうする家康』で小牧・長久手の戦いが描かれるにあたり、合戦の概要を地図で解説しました。犬山城の秀吉陣と小牧山城の家康陣営が対峙したこの戦い。秀吉が家康の本拠地・三河岡崎城を攻めようとした三河中入り作戦、その作戦を打ち破るべく小牧山城で家康勢がどんな動きをしたのかを説明。城にポイントを置いた先生独自の解説でドラマを見るのがより楽しみに。

さらに家康がこの戦いのために指示した小牧山城の改修で巨大な土塁、二重の横堀のほか、馬出しに注目。武田信玄と戦いを経て、武田流の城づくりも取り入れていると指摘。馬出しはその後の岡崎城、江戸城にも複数見られ、小牧山城は歴史的な意味で大きな役割を果たした城と説明しました。


6. 千田嘉博先生コメント

小牧山城というのは、早くに国の史跡にもなっていますので大事な城ということはよく知られていたのですが、その実像はわかっていませんでした。あの『信長公記』にすらあまり書かれていなかったんですよね。文字の史料から信長、秀吉、家康の時代を考えることで、これまで歴史研究は大きな成果を上げてきましたが、それで全部わかるかというとそうではない。発掘調査を軸にした考古学の研究から新たな事実がこんなにわかるんだという象徴的な例が、小牧山城だと思います。

家康は天正12年の「小牧・長久手の戦い」で小牧山城を本陣にしました。その時に信長がつくった石垣を土で埋めて、いわばパックするような形で保存してくれていた。結果として発掘調査で、信長がこの石垣をこういうふうに積ませたのか、これを見ていたのか…というのがわかったのです。石垣を見ていくと、ひとつひとつの石は異なるかたちをしています。多様なかたちの石をどう積んだのか、当時の最高の技術と、知恵を尽くした信長の城の設計を改めて実感していただけるのではないかと思います。

今回の講座の中では、小牧山城のほかに信長が誕生した勝幡城や大河ドラマにも登場した清須城などの城についても千田先生が解説しています。講座のアーカイブは10月2日まで配信中。ぜひチェックしてみてください!

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レポート/ライター:高田りぶれ(たかだ・りぶれ)
山形県生まれ。ライターなど。放送作家のキャリアを生かし、
テレビ・ラジオ番組のおもしろさを伝える解説文を年間150本以上執筆。
趣味は観ること(プロレス、サッカー、相撲、ドラマ、お笑い、演劇)、遠征、料理。
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■千田嘉博の最強の城講座「信長・秀吉・家康をつなぐ城」詳細

 

  • 講座名:千田嘉博の最強の城講座「信長・秀吉・家康をつなぐ城」
  • 講師:千田嘉博(城郭考古学者)
  • アーカイブ配信:2023年10月2日(月)23時59分 まで
  • 配信チケット販売期間:2023年10月2日(月)12時(正午) まで

    ※配信は終了いたしました

■講師プロフィール

千田 嘉博さん
千田 嘉博さん
城郭考古学者・奈良大学教授・名古屋市立大学特任教授  
1963(昭和38)年、愛知県生まれ。城郭考古学者、大阪大学博士(文学)。現在、奈良大学文学部文化財学科教授。中学生の夏休みに姫路城を遠望して感動し、日本と世界の城の探検をはじめる。2015年に濱田青陵賞受賞。主な著書に『戦国の城を歩く』(ちくま学芸文庫)『信長の城』(岩波書店)『城郭考古学の冒険』(幻冬舎新書)などがある。

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