「刀剣Lovers」でお馴染みのポールさんに聞く! 日本刀の魅力ってなんですか?

「刀剣Lovers」でお馴染みのポールさんに聞く! 日本刀の魅力ってなんですか?

ゲームやアニメから巻き起こった刀剣ブームで、国内外から日本刀に熱い視線が注がれています。NHKの教養番組『趣味どきっ!』では「刀剣Lovers入門」「刀剣Lovers探求」の2シリーズを放送しました。この番組で講師を務め、日本刀の魅力や奥深さを紹介したポール・マーティンさん(イギリス人の日本刀研究家)にインタビュー。日本刀との出会いや魅力、初心者向けの鑑賞法、お気に入りの名刀・甲冑について聞きました。

目次


大英博物館で日本刀と出会い、警備員から学芸員に

Q:ポールさんと日本文化、日本刀との出会いについて教えてください。

日本文化との出会いの最初は、幼い頃に父親の影響で始めた空手でした。空手をきっかけに、武士道やサムライスピリッツ、日本の礼儀作法に触れていったのです。日本刀に興味を持ったのは10代の頃。黒澤明監督や高倉健さんの映画で侍が腰につけている刀がかっこいいなと感じたのが始まりでした。

そして、28歳の時に大英博物館の警備員として採用された私は、ある日、日本部門のギャラリーで本物の日本刀を見てほんとうに感動したのです。日本刀には美しさだけでなく歴史の積み重ねがあり、さまざまな精神や意味が込められている。びっくりしたというよりも、さすが!と思いましたね。

Q:大英博物館では、その後のポールさんの運命を左右する人物と出会ったそうですね。

当時日本部門の部長だったビクター・ハリスさんです。イギリス人の日本刀専門家で、私の師匠となった方です。警備員だった私は、部長と話す機会を得て以降、日本刀はもとより、日本語について猛勉強を始めました。

ビクター・ハリスさんが書いた本を読んで日本刀の刃文や地鉄のことを学んだほか、イギリスで開催される日本刀鑑賞会にも頻繁に通ったり……。そしてとうとう念願のキュレーター(学芸員)になることができたのです。部長のもとで刀剣の手入れや展示を行いながら、日本に仕事で行く機会もたびたび訪れました。各地で素晴らしい刀を見せていただいたことは本当に勉強になりましたね。

Q:アメリカに渡って、さらに勉強を重ねられたのですね。

2010年にカリフォルニア州のバークレー大学院に入学し、2012年に卒業しました。日本語、古文、漢文などを学び、アジア学の修士号を取得したのです。大学院の夏休みの間にはイギリスに戻り、大英博物館の学芸員として日本部門の刀剣や鎧コレクションの管理をしていました。

日本刀の魅力と日本刀の楽しみ方

Q:イギリス人のポールさんから見た日本刀の魅力とは?

日本刀は世界各地のSwordと同様によく切れる武器ですが、鉄の美に違いがあると思います。海外のSwordは磨くと鏡のようになりますが、日本の刀は研ぐと木の板のような肌目や刃文がとても美しい。そして日本刀には精神が込められていて、人間の感情を動かす力がある。そこが魅力的で面白いところですね。

Q:刀剣初心者向けに鑑賞するためのポイントを教えてください。

初心者の方は、できるだけたくさんの博物館や展示会などで名刀を見た方がいいですね。より多く見ることで良い刀と悪い刀を判別する力がつきます。また専門用語を覚えることでより理解が深まります。用語のほとんどは自然に関するもので、とてもロマンティックです。例えば、刃の中の働きをさす「葉(よう)」は、紅葉や落葉のようなイメージですね。

刀の美しさを鑑賞する文化は、日本にしかないものだと言われています。山口県の防府天満宮所蔵される鎌倉時代の『松崎天神縁起絵巻』(重文)には、刀の細かい刃文や肌目などを眺める人物が、素手で触らず、袖の上に乗せている場面が登場します。これはこの時代からすでに刀を鑑賞する知識を持っていた証拠ですね。日本刀を学ぶことは日本文化を知ることにつながるのです。

恩師とゆかりのある小川盛弘さん

Q:小川盛弘さんの著書『名刀甲冑武具大鑑』の英訳を担当されたのですね。

小川盛弘先生は、私が大英博物館で出会った師匠ビクター・ハリスさんの先輩にあたる方です。小川先生は刀剣界の第一人者・佐藤寒山先生の弟子で、アメリカに渡ってボストン美術館やメトロポリタン美術館所蔵の知られざる日本の武器・武具の調査研究にあたられ、メトロポリタン博物館では大展覧会「Art of the Samurai: Japanese Arms and Armor」も開催しています。日本と海外との間で日本刀文化の橋渡しをされた憧れのパイオニアです。

『名刀甲冑武具大鑑』では、そんなリスペクトする小川先生の指示をあおぎながら、掲載されたトータル316点の名刀名品の名称・製作年代などと巻頭言の英訳を担当しました。この分野の英訳は時代の背景や製作状況も考えつつ、さまざまな日本文化の知識が必要になりますので難しかったです。今回の英訳は一生に一度しかできない経験。素晴らしい本に携わることができて光栄に思っています。

『名刀甲冑武具大鑑』には109点の国宝刀を柱に、実に多くの名刀が掲載されています。日本刀を鑑賞するポイントである「良い刀を見極める目を養う」ために、とても役立つと思います。

『名刀甲冑武具大鑑』からおすすめの名刀・甲冑をポールさんが解説

おすすめの名刀①(『名刀甲冑武具大鑑』図版No.161)

 国宝 太刀 無銘 一文字(号 山鳥毛)附 黒塗合口打刀拵
 太刀:鎌倉時代(12世紀) 拵:室町時代末期(16世紀)
 岡山・瀬戸内市蔵(備前長船刀剣博物館保管)

大模様かつ複雑に乱れた刃文に特徴がある刀剣界で大人気の名刀。戦国武将の上杉謙信・景勝親子の愛刀として伝来したもので、「山鳥毛」とは刃文が山鳥の毛、あるいは激しく燃え盛る山火事に似ているからなど諸説があります。刀を通して上杉謙信と私たちが同じ感銘、感覚を覚えられると思うと鳥肌が立ちます。鐔がない合口式の拵も注目です。

おすすめの名刀②(『名刀甲冑武具大鑑』図版No.193)

 国宝 太刀 銘 為次(号 狐ヶ崎) 附 黒漆革巻太刀拵
 鎌倉時代(12世紀末)
 山口・吉川史料館(岩国市)蔵

鎌倉時代の御家人・吉川友兼が、幕府を追われた梶原景時一行と駿河の狐ヶ崎(静岡市)で相まみえた時に用いたと伝わる太刀です。刀身を自然の景色に見立てれば、霧がかかった山の風景に見えてきます。刀身と拵がセットで伝来する鎌倉時代の太刀は珍しく、貴重です。革で巻かれて黒漆が塗られた拵の金物には、精緻な竹の葉の装飾が施されています。

おすすめの甲冑(『名刀甲冑武具大鑑』図版No.24)

 国宝 黒韋威伊予札胴丸(黒韋威矢筈札胴丸) 兜・大袖付
 南北朝時代(14世紀)
 奈良・春日大社蔵

多数の鎧兜を所蔵する春日大社に伝えられた甲冑で、戦国武将の楠木正成が奉納したといわれる一領です。南北朝時代に流行した胴丸の形式で、色彩に派手さはなく、武士の魂がよく見えるデザインだと思います。正成の真面目な性格が出ているのではないかと私は思います。

ポールさんからのメッセージ

私たちには、現在まで残されてきた日本刀や甲冑などの文化財と、それらを作る無形技術を未来に伝えていかなければいけない責任があります。そのためには、日本刀や甲冑を製作し修理する技術を持っている職人さんを大事にしなければいけません。

そうした努力を惜しまない日本のファンの皆さんに、私はとても感謝しています。これからもご一緒に日本刀を楽しみ、職人さんたちを応援していきましょう!

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開催日時:2024年1月21日(日)10:30~12:00予定
オンライン受講:2024年1月21日(日)10:30~12:00予定
開催場所:NHKカルチャー青山教室(東京都港区南青山1-1-1新青山ビル西館4F)
受講料:①教室受講【会員】3,432円(税込)・【一般(入会不要)】3,750円(税込)
    ②オンライン受講:3,300円(税込

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