相手を本にして生い立ちや秘密を読み、指示を書き込むこともできる特殊能力“ヘブンズ・ドアー”を備えた漫画家・岸辺露伴。その露伴が遭遇する奇怪な事件に立ち向かう姿を描いたのが、荒木飛呂彦さんの大ヒット漫画『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズから生まれた傑作スピンオフ『岸辺露伴は動かない』です。2020年12月に自身「露伴の大ファン」と公言して憚らない俳優の高橋一生さん主演で、実写化ドラマ化され、大きな反響を呼びました。
本作は、ホラーやミステリーの要素を織り込んだ独特のサスペンスあふれるドラマとなっており、原作を知っている人も知らない人も、老若男女問わず楽しむことができます。
2023年5月26日からは、美の殿堂・ルーヴル美術館を舞台にした新作映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』が公開されるとのことで、今回はドラマシリーズ全8話の演出を担当し、映画では監督を務める渡辺一貴さんにお話を伺ってきました。
目次
漫画『岸辺露伴は動かない』の魅力とは?
実写化する上でのこだわったポイントは?
新作映画の見どころ「これまでにない露伴の表情が見られる」
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漫画『岸辺露伴は動かない』の魅力とは?
昔から『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズが大好きだった、という渡辺さん。原作のどこに惹かれたのか伺ってみました。
渡辺:(第4部『ダイヤモンドは砕けない』で登場する岸辺露伴に対して)「ジョジョ」の連載当初から魅力的で面白いキャラクターだと感じていました。スピンオフ漫画『岸辺露伴は動かない』が出た時には、『ジョジョの奇妙な冒険』とは少し違った、“日本の習俗的な恐怖”が根底にある気がして。そこにとても惹かれました。
実写化する上でのこだわったポイントは?
荒木先生が描く世界を実写化するにあたって、渡辺さんがこだわったポイントについても伺いました。
渡辺:「岸辺露伴」シリーズは登場人物が少ないのが特徴の一つだと思います。限られた登場人物の中で、露伴と対峙する誰かとの言葉のやりとりや駆け引きといった心理的な探り合いで話が展開していく、荒木先生の原作にあるような「言葉の面白さ」を活かした物語にしたいと考えていました。
映画でもこの思いは大切にしているという。
渡辺:規模が大きくなるので、CGを増やしたり出演者を増やしたりして、豪華にしてみようとするのではなく、今までのテレビシリーズで大切にしてきたところをそのまま映画でも引き続き表現していきたいなと。
作中で大切な鍵を握る女性・奈々瀬を演じるのは木村文乃
映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』ではテレビシリーズに登場した岸辺露伴や泉京香だけでなく、新しく色々な人物が登場します。
その中でも大切な鍵を握るのが木村文乃さん演じる奈々瀬です。
渡辺:奈々瀬は今回の映画で大切な鍵を握る女性で、露伴のエピソードの中ではこれまでなかった淡い思いを抱く女性であり、しかもかなり謎を秘めたミステリアスな存在です。
本作で重要な役どころである奈々瀬。
奈々瀬を木村文乃さんに決めた理由は彼女の佇まいや演技にあるという。
渡辺:本作の中で奈々瀬の本質は物語の最終盤になるまで見えません。どんな背景が彼女の行動の裏にあるのかは最初の方では描かれないため、行動だけ追っていくと奈々瀬はエキセントリックな人物に見えてしまいます。
しかし、木村さんの佇まいと演技であれば一見不安定に見える奈々瀬の行動にも説得力が持たせられますし、「裏に何か事情があるんだな」と想像できるのではないかと思いました。
長尾謙杜(なにわ男子)が露伴の青年期を演じる
また、本作では初めて露伴の青年期が描かれます。青年期の岸辺露伴を演じるのは、長尾謙杜さん。
キャスティングの決め手となったのは長尾さんの横顔だったという。
渡辺:青年期の岸辺露伴を描くにあたり、高橋一生さんが演じる岸辺露伴がそのまま少年時代になったのではなく、一生さんの完成された岸辺露伴になる前の、ナイーブな状態の岸辺露伴を描きたくて。
青年期の岸辺露伴は憂いのある佇まいが似合う人にやってほしいと考えていた中、たまたま長尾さんのはかなげな横顔の画像をネットで見つけたのがきっかけでオファーしました。
長尾さんにはどのような露伴を描きたいかも話したという。
渡辺:先ほどもお話しした通り、高橋一生さんが演じる岸辺露伴を演じる必要はなかったので、テレビシリーズの露伴には引っ張られなくていいし、気にせずに演じてほしいという話をしました。
新作映画の見どころ「これまでにない露伴の表情が見られる」
最後に5月26日に公開される映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』の見どころについて伺いました。
渡辺:テレビシリーズをご覧になった方にとっては、今まで見たことのない露伴の様々な表情を高橋さんが見せてくださっています。また、もちろんルーヴルでの撮影も見どころだと思いますし、ストーリーも先の読めない展開となっていますのでぜひ楽しんでいただけたらと思います。
監督:渡辺一貴
1969年生まれ。1991年にNHKに入局。数多くのテレビドラマ作品を手掛けており、現在はNHKエンタープライズに所属。主な演出作品に『龍馬伝』『平清盛』『まれ』『おんな城主 直虎』『お葬式で会いましょう』『おもひでぽろぽろ』『雪国 -SNOW COUNTRY-』などがある。『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』で初めて劇場公開映画の監督を務める。
映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』5月26日ロードショー
【ストーリー】
特殊能力を持つ、漫画家・岸辺露伴は、青年時代に淡い思いを抱いた女性からこの世で「最も黒い絵」の噂を聞く。それは最も黒く、そしてこの世で最も邪悪な絵だった。 時は経ち、新作執筆の過程で、その絵がルーヴル美術館に所蔵されていることを知った露伴は取材とかつての微かな慕情のためにフランスを訪れる。しかし、不思議なことに美術館職員すら「黒い絵」の存在を知らず、データベースでヒットした保管場所は、今はもう使われていないはずの地下倉庫 「Z-13倉庫」だった。
そこで露伴は「黒い絵」が引き起こす恐ろしい出来事に対峙することとなる・・・
出演: 高橋一生 飯豊まりえ / 長尾謙杜 安藤政信 美波 / 木村文乃
原作:荒木飛呂彦「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」(集英社 ウルトラジャンプ愛蔵版コミックス刊)
監督:渡辺一貴
脚本:小林靖子
音楽: 菊地成孔 / 新音楽制作工房
人物デザイン監修・衣裳デザイン : 柘植伊佐夫
製作:『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』製作委員会
制作プロダクション:アスミック・エース、NHKエンタープライズ、 P.I.C.S.
配給:アスミック・エース
©2023 「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」製作委員会 ©LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社
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