初心者向け俳句の作り方【俳句上達最短距離】

初心者向け俳句の作り方【俳句上達最短距離】

日本の伝統的な詩のひとつ「俳句」。五・七・五の17音に季節の言葉を入れて作れる手軽さもあり、俳句愛好者も増えています。俳句を作ってみたい、興味がある…そんな初心者の方向けに俳句の基礎知識や作り方をご紹介。

さらにNHK文化センター青山教室で開催された特別講座『俳句上達最短距離!!! 誰もが通る「初心時代」をいかに突き抜けるか?』から、初心者にうれしい上達のコツをまとめました。ぜひ、俳句作りの初めの一歩に役立ててください。

目次

1. 俳句とは
2. 初心者でも簡単!俳句の作り方
3. 初心者向け!俳句を作るときのポイント
 3-1. 切れ字を使用する
 3-2. 俳句のタネをメモしておく
 3-3. 歳時記を読む
4.俳句の作り方やコツをもっと知りたい方は
 4-1.季語採集は写真で
 4-2.「取り合わせ」の距離は離したほうがいい
 4-3.「取り合わせ」で困った時の解決法

俳句とは

俳句は季節を表す言葉「季語」を入れ、五・七・五の17音の定型で作るのが原則です。十七音より音の数が多い「字余り」、少ないのが「字足らず」の句。ほか、十七音に囚われず、季語も入れずに作る「自由律」の句もあります。俳句の初めの5音を上五(かみご)、真ん中の7音を中七(なかしち)、最後の5音を下五(しもご)と呼びます。

季語とは俳句の季節を表す言葉。新年は、初日の出やお年玉、年賀状など。春は桜や梅、朧月、バレンタインなど。夏は梅雨やプール、アイスクリームなど。秋は名月や葡萄、林檎など。冬は雪やクリスマス、オリオンなど。それぞれの季節の光景をイメージさせる言葉を入れます。季語は身の回りにたくさんあり、時代とともにどんどん増えています。

5音の季語集や季語の解説や例句が掲載された「歳時記」を手元に置いて確認するとよいでしょう。なお、短歌は五・七・五・七・七の31文字で作ります。俳句のように季語を入れるというルールはありません。

初心者でも簡単!俳句の作り方

俳句の作り方は「一物(いちぶつ)仕立て」と「取り合わせ」の2つの型に分けられます。「一物(いちぶつ)仕立て」は「季語」(一物)のことを詠んで作った俳句。「取り合わせ」は「季語」と、季語とは関係ない「俳句のタネ」を取り合わせて作った俳句です。発表されている俳句全体で見ても「取り合わせ」の数が多く、「一物(いちぶつ)仕立て」よりも簡単なので初心者にもおすすめです。 

「取り合わせ」の型では、日常で体験したことや心の中でのつぶやき12音(俳句のタネ)に5音の季語を文字通り取り合わせて俳句を作ります。季語は最後の5音「下五」でも最初の5音「上五」どちらでもOK。また俳句では「兄弟」「初心」などに含まれる「きょ」「しょ」といった二字を一音に数えます。「ボール」「ビール」といった際に使われる長音符も一音に換算。「ロケット」「バット」といった「ッ」の表記の音も一音となります。リズムは俳句には重要な要素ですので効果的に取り入れましょう。

12音の俳句のタネが決まったら5音の季語選び。タネに合う季節のものや組み合わせると心地よいリズムを感じる季語を吟味します。初心者の方は5音の季語集から選んでみるのもよいかもしれません。まずは「取り合わせ」の型で日々の心のつぶやきや出来事を俳句にしてみてください。

初心者向け!俳句を作るときのポイント

■切れ字を使用する

 「取り合わせ」の型では5音の季語と12音を取り合わせて俳句を作りますが、4音の季語を上五に置いて使いたい場合は、切れ字の「や」をつけることで使用できます。切れ字とは句の切れ目に使い、「かな」「や」「けり」といった詠嘆・強調を表す言葉。「かな」は感動や詠嘆、「けり」は断言を表して末尾に。詠嘆や呼びかけを表す「や」は上の句に使用することでより情景を深く想起させ、リズムを整える効果があります。切れ字は安易に多用せず、一句につき一つ使用するようにしましょう。

■俳句のタネをメモしておく

身の回りで起こった良いことや悪いこと、悲しみや怒りなど心が動いた時のことなどが俳句のタネに。その時の会話やそばにあったもの、目にしたものなどを普段からメモしておくと便利でしょう。抽象的な言葉を入れるより、具体的な名前を入れて表現すると読み手に響くことも。ものや風景を観察する手法としては見たまま感じたままの光景をそのまま表現する「写生」もあります。

■歳時記を読む

季語や例句を収録した「歳時記」を読むことも上達のポイント。季語の成り立ちを知って言葉の意味を深く理解することでよい「取り合わせ」が浮かぶことも。新年、春夏秋冬の区分でも意外なものや事柄があり、発見も多いでしょう。書籍だけではなく、インターネットでも読むことができます。さまざまな季語を目にするうちに、記憶がよみがえって素敵な情景が浮かぶかもしれません。

俳句の作り方やコツをもっと知りたい方は

『俳句上達最短距離!!! 誰もが通る「初心時代」をいかに突き抜けるか?』

※講座/配信は終了しました。

NHK文化センター青山教室で開催された特別講座『俳句上達最短距離!!! 誰もが通る「初心時代」をいかに突き抜けるか?』。登壇したのは2017年に始まったEテレ『NHK俳句 俳句さく咲く!』の顔ぶれ。当時の番組プロデューサー蜂谷一人さん、選者の櫂未知子さん、MCを担当した武井壮さんが自らの経験談を交えて、俳句初心者の方へ上達のコツを伝授しました。

講座から俳句作りに役立つコツをピックアップしてご紹介します。

■季語採集は写真で

武井壮さんアドバイス

『俳句さく咲く!』のMCに抜擢され、俳句に親しむようになりました。最初は点数をもらうことが難しく、つらい日々を送っていましたが、その中で「歳時記」の全季節分を購入しました。仕事の移動中などには、季語の説明や例句を熟読し、その構造や特徴を理解するように努めました。

▼武井壮さんが作成した俳句

その後、名句の名詞や動詞を変えて作る型の編集を試みました。自分の体験や想いが入っていない空っぽの句をつくることも勉強になりました。日常生活で季語との関わりを意識し、気になった季語の写真を様々なアングルで撮影してストックしました。この方法で俳句を作り始めると、徐々に点数が上がるようになりました。

武井壮(たけい そう)プロフィール
1973年生まれ。東京都出身。陸上競技・十種競技の元日本チャンピオン。さまざまなスポーツに挑戦し続け、「百獣の王を目指す男」として注目を集め芸能界へ。以後テレビをはじめ映画、ラジオなど幅広く活躍。NHKでも出演作多数。『俳句さく咲く!』(Eテレ)や『武井壮のパラスポーツ真剣勝負』(BS1)ではMCを務めるほか、大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺』に押川春浪役として出演するなど俳優としても才能を発揮している。

■「取り合わせ」の距離は離したほうがいい

元「NHK俳句」プロデューサー
俳人・蜂谷 一人さんアドバイス

取り合わせの距離感は昔に比べてますます広がっています。季語をメロディと捉えると、それ以外の言葉は和音に相当します。モーツァルトの時代の音楽ではメロディと和音が融合しており、これが聴きやすい一方で、マンネリに陥りやすく飽きられることもありました。一方で、現代の音楽はメロディを無視したかのような不協和音をどれだけカッコよく表現できるかが重要とされています。新しさが求められる中、時代の感性として取り合わせの距離はますます遠のいているのです。

  「雪女鉄瓶の湯の練れてきし」(小川軽舟)

という句において、「雪女」と「鉄瓶の湯」という想像上の季語の関連性の薄さが際立っています。最初は「冬ごもり」という言葉でしたが、「雪女」という言葉に飛躍しています。このような遠い句は珍しいものの、取り合わせは近すぎるよりも離れている方が良いのではないでしょうか。

蜂谷 一人(はちや はつと)プロフィール
1954年、岡山市生まれ。俳人、画人、TVプロデューサー。1978年NHKに入局し「NHK俳句」「俳句さく咲く」「歳時記食堂」等を制作。句集「青でなくブルー」が第31回俳壇賞を受賞。

 

■「取り合わせ」で困った時の解決法

「群青」代表/公益社団法人俳人協会理事
俳人・櫂 未知子さんアドバイス

季語に矢印を添え、関連する言葉や連想される言葉を記していきます。そして、出てきた言葉から関連するものを拡げていきます。

ただし、進む方向を戻らずに保つことが大切です。最終的には最初の季語との取り合わせも検討してみましょう。

櫂 未知子(かい みちこ)プロフィール
1960年、北海道生まれ。「群青」共同代表、「銀化」同人。公益社団法人俳人協会理事。公益社団法人日本文藝家協会・国際俳句交流協会各会員。 句集に『貴族』(第二回中新田俳句大賞受賞)・『蒙古』、句文集に『櫂未知子集』、著書に『季語の底力』(第18回俳人協会評諭新人賞受賞)『食の一句』『言葉の歳事記』『季語、いただきます』、共著に『第一句集を語る』などがある。

         
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