光悦ゆかりの全110作品を網羅!特別展「本阿弥光悦の大宇宙」図録の楽しみ方

光悦ゆかりの全110作品を網羅!特別展「本阿弥光悦の大宇宙」図録の楽しみ方

特別展「本阿弥光悦の大宇宙」が東京国立博物館 平成館にて2024310日まで開催されています。戦乱の世から江戸時代にかけて活躍した本阿弥光悦。革新的なセンスで生み出した作品たちは国宝や重要文化財に指定され、今もなお大きな影響を与えています。

比類ない創造性の持ち主・光悦の全体像をたどる本展。光悦ゆかりの全110作品をカラー写真と詳細解説で網羅した図録を読めば、より深淵な光悦ワールドに迫れますよ。

目次

超拡大グラビア、カラー図版で名品をじっくり鑑賞できる


特別展「本阿弥光悦の大宇宙」公式図録 P6-7 国宝 「舟橋蒔絵硯箱」東京国立博物館蔵

厚さ約2センチメートル、A4サイズ・252ページの図録では光悦ゆかりの110作品をカラー図版と担当研究員による解説で紹介。巻頭グラビアページには、本展の注目作がズラリ。

ポスターなどにもデザインされ、独特のフォルムが目を引く光悦作の国宝「舟橋蒔絵硯箱」では黒い鉛板の文字に思い切りズーム。鉛版は金地に舟が4艘並ぶ川に掛けた橋を表現しています。そこに光悦独特の力強い筆使いがくっきり。鉛版の光沢のある質感も見て取れます。


特別展「本阿弥光悦の大宇宙」公式図録 P8-9 重要文化財 「鶴下絵三十六歌仙和歌巻」京都国立博物館蔵

俵屋宗達が下絵を描き、光悦が和歌を筆で書いて重ねた重要文化財「鶴下絵三十六歌仙和歌巻」も巻頭グラビアに。会場では鶴たちが飛翔、着地するさまを描いた13メートル以上の全巻を一挙公開。この和歌巻の世界を感じられる会場演出も話題の作品です。

宗達と共同で仕上げたという見方もある本作。下絵の雰囲気に合わせて筆の運びを変えてあり、その作業風景の想像も膨らみます。図録では全巻のカラー図版を掲載。美しい宗達の鶴の絵とともに光悦筆による紀貫之や小野小町らの和歌もじっくり鑑賞を。


特別展「本阿弥光悦の大宇宙」公式図録 P2-3 重要美術品 「短刀 銘 兼氏 金象嵌 花形見」「(刀装)刻鞘変り塗忍ぶ草蒔絵合口腰刀」

光悦の唯一の指料とされ、本展で40年ぶりに公開となった重要文化財「短刀 銘 兼氏 金象嵌 花形見」と「(刀装)刻鞘変り塗忍ぶ草蒔絵合口腰刀」も巻頭で超拡大されています。

短刀には大きく乱れた湾れの刃文や小板目の地鉄についた地沸も確認。細かな金蒔絵の忍ぶ草で散りばめられ、朱塗りされた鞘の光沢感も鮮やかさが際立ちます。展示室では気づけなかった名品の魅力に気付けるのが図録の醍醐味。


特別展「本阿弥光悦の大宇宙」公式図録 P38-39 国宝「刀 無銘 正宗(名物 観世正宗)」国宝「刀 金象嵌銘 城和泉守所持 正宗磨上 本阿(花押)」東京国立博物館蔵

本展には刀剣界の権威・本阿弥家が認めた刀鍛冶たちの名刀も登場。鎌倉時代の刀鍛冶・相州正宗作の国宝「刀 無銘 正宗(名物 観世正宗)」、国宝「刀 金象嵌銘 城和泉守所持 正宗磨上 本阿(花押)」ら名刀のカラー図版も図録に収録。刀身全体、柄の中に入る茎に刻まれた銘や刃文を見やすいように拡大し、刀剣ファンにうれしい心遣いが感じられます。

展示室では見られないさまざまな角度、中側や裏側も図録で公開


特別展「本阿弥光悦の大宇宙」公式図録 P98-99 国宝「舟橋蒔絵硯箱」 東京国立博物館蔵

 本展の象徴的な作品、光悦作の「舟橋蒔絵硯箱」は蓋を閉じた状態で展示されています。金地で覆われた国宝を前後左右から鑑賞できますが、硯箱の中側は見ることができません。

しかし、図録では気になる中側の硯部分や展示室では見にくかった真上から見た作品の画像を掲載。さまざまな角度から見た硯箱の細かなディティールが確認でき、新たな気づきが生まれるかもしれません。


特別展「本阿弥光悦の大宇宙」公式図録 P154-155 重要文化財「黒楽茶碗 銘 時雨」愛知・名古屋市博物館蔵

光悦作の重要文化財「黒楽茶碗 銘 時雨」ら、陶芸作品はガラス張りのケースでの展示。図録では会場では見られない底部分、さらに細部まで写した図版で器の質感や造形を味わうことができます。

光悦が樂焼で知られる樂家2代・常慶とその子である道入と親交を深めて教わった「手づくね」による茶碗の数々。偶然生じたひび割れを入れ込んだ造形など時折土を感じさせる器の肌面などもじっくり鑑賞できます。

特別展「本阿弥光悦の大宇宙」の全作品を網羅した図録には、担当研究員による最新の研究に基づいたコラムや作品の詳細解説、光悦の生涯と世の中の動きをまとめた年表なども収録されています。展覧会で目撃した光悦の歴史や作品について、その価値や見方をさらに深く知ることができる図録。会場のほか、 NHKグループモールでもご購入いただけます。

特別展「本阿弥光悦の大宇宙」概要

 

会期:2024年1月16日(火)3月10日(日)
■会場:東京国立博物館 平成館
■会館時間:9時30分~17時
※2月16日(金)から、毎週金・土曜日は午後7時まで
※入館は閉館の30分前まで

■休館日:月曜日、2月13日(火)※ただし、2月12日(月・休)は開館
■観覧料(税込):一般 2,100円 大学生 1,300円 高校生 900円
※中学生以下、障がい者とその介護者1名は無料。入館の際に学生証、障がい者手帳等をご提示ください。
公式サイト:https://koetsu2024.jp/

※展覧会は終了しました。

 本阿弥光悦(ほんあみこうえつ・1558~1637)は戦乱の時代に生き、さまざまな造形にかかわり、革新的で傑出した品々を生み出しました。それらは後代の日本文化に大きな影響を与えています。しかし光悦の世界は大宇宙(マクロコスモス)のごとく深淵で、その全体像をたどることは容易ではありません。
そこでこの展覧会では、光悦自身の手による書や作陶にあらわれた内面世界と、同じ信仰のもとに参集した工匠たちがかかわった蒔絵など同時代の社会状況に応答した造形とを結び付ける糸として、本阿弥家の信仰とともに、当時の法華町衆の社会についても注目します。造形の世界の最新研究と信仰のあり様とを照らしあわせることで、総合的に光悦を見通そうとするものです。
「一生涯へつらい候事至てきらひの人」で「異風者」(『本阿弥行状記』)といわれた光悦が、篤い信仰のもと確固とした精神に裏打ちされた美意識によって作り上げた諸芸の優品の数々は、現代において私たちの目にどのように映るのか。本展を通じて紹介いたします。

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特別展「本阿弥光悦の大宇宙」公式図録

すべての展示作品を豊富なカラー図版と詳細な解説で紹介。 また、名品の数々を超拡大のグラビアベージで掲載し、個性的なフォルムをみせる優品の質感と表情にも迫ります。 各分野の研究者が集い、各章の解説やコラムでは最新の知見を網羅!これまで注目されてこなかった光悦の信仰のあり様も明らかにします。

■特別展「本阿弥光悦の大宇宙」公式図録 3,000円(税込)
*完売しました。


【図録セット】特別展「本阿弥光悦の大宇宙」/建立900年 特別展「中尊寺金色堂」

 ■【図録セット】特別展「本阿弥光悦の大宇宙」/建立900年 特別展「中尊寺金色堂」 5,800円(税込)
*完売しました。

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◆レポート/ライター
高田りぶれ(たかだ・りぶれ)

山形県生まれ。ライターなど。放送作家のキャリアを生かし、テレビ・ラジオ番組のおもしろさを伝える解説文を年間150本以上執筆。趣味は観ること(プロレス、サッカー、相撲、ドラマ、お笑い、演劇)、遠征、料理。

         

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