恐竜キッズとの熱いセッションがエモい!古生物学者・小林快次さん恐竜講座レポート&インタビュー

恐竜キッズとの熱いセッションがエモい!古生物学者・小林快次さん恐竜講座レポート&インタビュー

映画『恐竜超伝説2 劇場版ダーウィンが来た!』をとことん楽しむための記念講座が2024年3月にNHK文化センター青山教室で開催されました。講師は本作の監修を務め、恐竜ファンの間では“ダイナソー小林”の愛称で呼ばれている古生物学者・小林快次さん。恐竜好きの子どもたちが大勢詰めかけた講義の模様、映画の見所や制作秘話などを聞いたインタビューもお届けします。

目次

恐竜キッズのために「子ども席」を設置

全国各地で恐竜講座を開催している小林さん。会場前方に「子ども席」を設置し、親御さんは後方で見守るという着席スタイルが定着しているそうです。講義が始まるまで図鑑を熱心に読み込む子、恐竜の絵を描く子、恐竜の歯のレプリカを握り締めている子も。講義が始まると一斉にノートとペンを手に取り、貴重な恐竜情報を聞き逃すまいと90分全集中していました。

 

映画に登場した恐竜の生態や隕石衝突後の世界について解説

小林さんが監修した本作は6600万年前の南半球に位置した超巨大大陸「ゴンドワナ」が舞台。この大陸で生きていた超巨大恐竜たち、隕石衝突によって突然火災や寒冷化に見舞われた中でたくましく生きていた恐竜たちのストーリーを描く内容です。

数多くの発見をもとに映像化が進められたという本作。その制作秘話や登場する恐竜たちについて最新研究でわかったことを解説しました。映画に登場した「恐ろしい手」の異名を持ち、全長11メートル、高さ4.5メートルのデイノケイルスは小林さんがモンゴルで発掘した恐竜。さまざまな土地で発掘された骨の化石を組み合わせ、全身骨格を作り上げたことなど貴重なエピソードも披露しました。

恐竜の化石が多数発掘される世界各国にある恐竜の産地の様子や現地で調査風景、研究施設の様子なども公開。子どもたちは図鑑には載っていない貴重な情報が飛び出すと熱心にメモを取り、歓声を上げていました。

 

“ダイナソー小林”と恐竜キッズのセッションがエモい講義

「どっちが強いと思う?」「仲間にはどんな恐竜がいる?」「これ知ってる人!」など小林さんが子どもたちに語り掛け、セッションしながら進めていくインタラクティブ(双方向)な講義。子どもたちの見解を聞いたり、彼らの恐竜の知識を引き出したりとにぎやかに進行。投影する資料は英語や難解な漢字が多い研究者向けのものを使用しているにもかかわらず、子どもたちはその資料を理解し、先生からの質問にも驚きのスピードで回答していました。

最後の小林さんへの質問コーナーは挙手制。専門的でマニアックな質問が多く飛び交う中、「先生は定年退職したらどこに行くのか」という将来を見据えた内容も。また「先生の夢は何ですか」との質問に「先生の今の夢はないです」と小林さん。会場がざわつく中で「今、先生は夢の中にいるからです。今、やっていることが夢なんで。いいでしょ、うらやましいでしょ(笑)とにかく調査も研究も勉強も楽しい。勉強なんかしなくていい。楽しんで学んで欲しいな。そうするとみんなも夢に到達しますので」と未来の研究者たちに向けてアドバイスをしていました。

 

北海道大学総合博物館・教授 古生物学者 小林快次さんインタビュー

――子どもたちの恐竜知識の豊富さに圧倒されました。

小林:親御さんに恐竜を勉強するのにいい本はなんですかと聞かれるんですけど、図鑑が一番いいんです。最新の情報もいっぱい入っているし、グラフィックスもいい。子どもたちは図鑑から最新の情報を頭に入れているんです。だから大人向けのパワポ資料を見せてもぜんぜんついてこられる。そして、僕から図鑑には載っていないもうちょいハイレベルな情報を引き出そうとするんですよ。

――今回の映画で南半球の超巨大大陸「ゴンドワナ大陸」を舞台にした理由を教えてください。

小林:これまでの恐竜映画や番組では日本人には身近な北半球のティラノサウルス、トリケラトプスとか決まったスターキャラクターが出てきていました。そんな北半球とはまた違った恐竜の世界が南半球には広がっていたんです。そのことが意外に知られていなかったので、今回の映画で異なる恐竜世界を見せようと思ったのが発端です。

映画ではゴンドワナの多様性と隕石が落ちた瞬間何が起こったかのドラマを描くという2つのテーマがあります。隕石が落ちてきた北半球の北米とかは被害があったけれど、南半球の南極周辺はそんなに被害はなかったんじゃないか…というところもポイントではあるんですけどね。

――隕石衝突後の恐竜たちの生存や絶滅について小林さんの見解は?

小林:隕石が衝突した後、恐竜はどのくらいで絶滅したのか。研究者それぞれの考えがあるので僕ら専門家からすると答えがないので答えようがないんですよ、本当は。でも、アラスカの調査で隕石が落ちる前から恐竜は寒くて厳しい環境でも生活ができていたことがわかったので、落ちてもしばらくは生きていたんじゃないのかというのが僕の考え。数百年とか数十年くらいだったらありえるかなと思いますけどね。

そういう目線で監督の植田(和貴)さんが海外の研究者に恐竜が隕石衝突からどのくらいで絶滅したかを聞いたら、みんなそれぞれの意見があったんですよ。それでこれは面白いよねと。研究ではわからないドラマを研究者の視点や背景の中でどこまでいえるかを掘り下げたのが今回の映画だったりするんですよね。

映画の中で展開するようなストーリーがあったかは決してわからない。誰も合っているか間違っているかの証明はできないんですけど。あえて真剣にそれぞれの恐竜の専門家が考えたらどうだろうねというところのおもしろさがあるので。研究と映像の掛け合わせでの化学反応が起きたと思いますけどね。

――小林さんにとって恐竜研究の魅力、おもしろいところはどこでしょう。

小林:う~ん、研究はおもしろいですからね(笑)研究者としては謎が多いところには惹きつけられる。恐竜なんて全然わかってないことだらけで研究すればするほど謎というか課題や問題が出てきて。ずっとエンドレスでやっています。

なぜ子どもたちに恐竜好きが多いかという意味では、僕らが想像できないような摩訶不思議な動物たちが本当に存在していたことに惹きつけられているんです。国立科学博物館で人気なのが、恐竜と深海にまつわる展示なんですよ。深海にも変わった動物がいるじゃないですか。

本当にいるの?と思うけど本当にいる。そういうギャップがたぶん子どもたちを惹きつけている。想像で作り出したキャラクターもいいんですけど、本当にいたっていうのが。巨大なものだったり、強いものだったり、いろんな飾りをつけていたり…というところがたぶんおもしろいんだと思いますけどね。

――映画の中に登場する恐竜の中でお気に入りを教えてください。

小林:バジャダサウルスですね。見た目が変わった恐竜で名前がついたのは最近なのですが、図鑑には載っていますね。子どもたちにもかなり浸透しています。

――ウルトラマンの怪獣にいそうなフォルムですよね。首からトゲが何本も生えていて…。

小林:そうそう、ウルトラマンの怪獣で出てきそう!だから好きなのかもしれない。おかげさまで謎が解けました(笑)

――これから映画をご覧になる方へメッセージをお願いします。

小林:ぜひ大きなスクリーンで見てほしいです。40メートル近くある超巨大なプエルタサウルスも原寸大に近いわけじゃないですか。映画館に来ると恐竜の大きさから体験できるし、グラフィックスもどんどんよくなっていてリアル感がすごいので体験・体感してほしいなと。恐竜たちのドラマも見どころですね。生き物なのでどうにかして生き延びようと努力する。愛情あるなしは別にしても戦いがあったり、助け合いがあったりして生き抜いていく姿を見てもらいたいです。


「恐竜超伝説2 劇場版ダーウィンが来た!」

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