「ガウディとサグラダ・ファミリア展」開幕レポート!ガウディの思考から聖堂建設プロジェクトを紐解く

「ガウディとサグラダ・ファミリア展」開幕レポート!ガウディの思考から聖堂建設プロジェクトを紐解く

2023年6月13日、東京国立近代美術館にて「ガウディとサグラダ・ファミリア展」が開幕しました。

本展は、バルセロナを中心に活躍した建築家アントニ・ガウディ(1852〜1926)と、彼が設計した「サグラダ・ファミリア聖堂」に焦点を当てた展覧会。ガウディの創造性の源泉を辿りながら、サグラダ・ファミリア聖堂建設のプロジェクトを明らかにしていくものとなっており、まるで彼の頭の中を覗いているかのような内容となっています。

本記事では、「ガウディとサグラダ・ファミリア展」の見どころや内容を写真を交えながらレポートします!

目次

1. アントニ・ガウディとは?
2. 大迫力の4K映像!サグラダ・ファミリア聖堂を空中散歩
3. ガウディの創造の源となったものは?
3-1. サグラダ・ファミリア聖堂以外の建築作品
3-2. 建築に呼応した家具をデザイン
3-3. ガウディが建築のためにおこなった実験
4. サグラダ・ファミリア聖堂の建設のプロセス
4-1. 模型でアイデアを固める
4-2. 石膏像も見どころ
5. もっとガウディとサグラダ・ファミリア聖堂を知りたいなら
6. 「ガウディとサグラダ・ファミリア展」開催概要

アントニ・ガウディとは?

アントニ・ガウディは、バルセロナを中心に活躍した建築家です。
日本ではサグラダ・ファミリア聖堂の建築家として名前が知られていますが、彼はそれ以外にも様々な建築物を残しています。

《ガウディ肖像写真》1878年、アウドゥアルト社、レウス市博物館 

スペインのカタルーニャ地方にあるレウスで生まれ、21歳で県立バルセロナ建築学校に入学したガウディ。彼は図書館で本にどっぷりと浸るのがとても好きだったらしく、様々な書籍から建築の勉強をしたとされています。

本展では参考にしたであろう図版なども展示されています。

ガウディが参考にした書物

また、彼が学生時代に残したスケッチや自筆のノートも。
あまりテキスト(文書)を残すタイプではなかったため、この自筆の建築ノートはとても貴重で珍しいものです。

アントニ・ガウディ、《ガウディ・ノート》1873-79年、レウス市博物館

そして26歳の時に建築学校を卒業し、建築家のタイトルを取得した彼は、パリ万博に展示された革手袋店のショーケースをデザイン。
ガウディはこのデザインをきっかけに、後にパトロンとなった実業家のアウゼビ・グエル(1846〜1918)と出会うことになります。

アントニ・ガウディ、《クメーリャ革手袋店ショーケース、パリ万国博覧会のためのスケッチ》1878 年、レウス市博物館

そして、ガウディはカサ・ビセンスやグエル公園といった世界遺産に登録された建築群など、様々な建築物を手掛け、31歳の時にサグラダ・ファミリア聖堂の2代目建築家に就任。

以後、ガウディは亡くなるまでの40年近くにわたって、サグラダ・ファミリア聖堂の建設に関わっていくこととなります。

ガウディが設計したサグラダ・ファミリア聖堂は多くの人を魅了しています。
その中の1人が、サグラダ・ファミリア聖堂彫刻家として現在も活躍する外尾悦郎氏です。

外尾氏はガウディとサグラダ・ファミリア聖堂についてこう言及しています。
「我々が人類として必要としている大切なヒントがサグラダ・ファミリア聖堂を構想したガウディにはあって。私たちはその魅力に惹きつけられている」

ぜひ、みなさんもガウディがどんなヒントを残したのか、サグラダ・ファミリア聖堂にどう表現されているか本展で見つけてみてはいかがでしょうか。

大迫力の4K映像!サグラダ・ファミリア聖堂を空中散歩

ガウディが人生の大部分をかけて手掛けたサグラダ・ファミリア聖堂。
ガウディは建物の造りだけでなく装飾にもとてもこだわっており、細部まで美しい装飾が施されています。

しかし、現地を訪れてもしっかり見れない部分もありますよね。

そこで本展では、NHKが撮影した高精細映像やドローン映像を駆使し、肉眼では捉えられない視点で聖堂を散策できる映像が用意されています。
まるでサグラダ・ファミリア聖堂を空中散歩しているかのような映像を素敵な音色と共に楽しめます。

見応え抜群ですので、映像展示もどうぞお見逃しなく!

ガウディの創造の源となったものは?

彼は度々”天才”と称されることがあります。
しかし、彼自身はすでに存在するものを発見し、そこから出発するのが人による創作と考え、こんな言葉を残しています。

“創造は、人を介して途絶えることなく続くが、人は創造しない“
“人は発見し、その発見から出発する。” 

本展では、サグラダ・ファミリア聖堂の建設プロジェクトを紐解くに当たって、ガウディの創造の源となったものがなんだったのか、彼が手掛けた仕事から考察しています。

サグラダ・ファミリア聖堂以外の建築作品

ガウディといえばサグラダ・ファミリア聖堂の建築家である印象が強いですが、先述したように彼はそれ以外の建築も手掛けています。
例えば、こちらの建築作品。

《フィンカ・グエル、馬場・厩舎模型》スケール:1:25、1984-85年、西武文理大学 

こちらはパトロンであるアウゼビ・グエルに依頼された最初の建築作品です。
模型の右側に見えるうろこ状のセメント製パネルは日本の青海波を彷彿とさせますね。

パラペット(屋上やバルコニーなどの外側に設置されている低い手すりのような部分)や壁面のレンガと、切張りタイルの組み合わせ装飾から派生したのが「破砕タイル手法」です。
割れた不良品タイルや故意に割ったタイル破片で壁面等を被覆する手法で、以降ガウディの建築の特徴的な手法になっています。

建築に呼応した家具をデザイン

ガウディは建物だけでなく、家具のデザインも手掛けています。
手掛けた家具は全て建物に呼応したものとなっており、ガウディのこだわりが伺えます。

ガウディが設計した家具

例えば、左と中央の家具は世界遺産に登録されている建物であるカサ・バッリョのために、右側の家具はカサ・カルベートのためにデザインされたもの。
特に、カサ・バッリョのために造られた椅子は最高傑作として位置付けられています。

こういった作品のディテールも本展では見逃せないポイントです。

ガウディが建築のためにおこなった実験

また、曲線を設計するために彼がおこなった逆さ吊り実験などを見ることもできます。

ガウディがおこなった逆さ吊り実験

逆さ吊り実験とは、鎖の垂れ下がりによって合理的な形状を得る手法を、三次元の立体に応用したもののこと。
彼は鎖の代わりに紐を使ったりおもりを変えたりして、試行錯誤しながら最良案を探して、建築デザインに反映していきました。

サグラダ・ファミリア聖堂の建設のプロセス

本展では、サグラダ・ファミリア聖堂建設のプロセスについても解説しています。

模型でアイデアを固める

建築家と聞くと、図面を書いている様子を思い浮かべる方は多いでしょう。
しかし、ガウディは図面を描くのではなく、模型でサグラダ・ファミリア聖堂の構造を固めていました。

そのため、ガウディが制作した模型はとても多く、本展にもたくさん展示されています。

ガウディが手掛けた模型群

例えばこちらは聖堂の屋根や窓の模型です。
他にも柱などの模型が展示されており、本展では数多くの模型からサグラダ・ファミリア聖堂がどのように造られているのか知ることができます。

また、一際目を引くダイナミックな模型も。

《サグラダ・ファミリア聖堂、身廊部模型》2001-02年 制作:サグラダ・ファミリア聖堂模型室、西武文理大学

こちらはサグラダ・ファミリア聖堂身廊部の模型です。
どのような設計になっているのかぜひ、近くで見てみてください。

石膏像も見どころ

展示室にはガウディが手掛けた石膏像も。

手前にガウディが手掛けた石膏像 奥には外尾悦郎氏が製作した石膏像も展示

ガウディは実際のモデルから型取りをして石膏像を作ったとされており、石膏像をよく見ると皮膚の質感が表現されています。

また、外尾悦郎氏が製作した石膏像も展示されています。
「歌う天使たち」という石膏像で、こちらなんと石像に置き換わるまでの10年間ほど、実際にサグラダ・ファミリア聖堂に設置されていたものとなっています。

こういった石膏像も本展の重要なポイントですので、ぜひチェックしてみてください。

もっとガウディとサグラダ・ファミリア聖堂を知りたいなら

「もっとガウディのことを知りたい」
「サグラダ・ファミリア聖堂の建築に興味がある!」
と感じた方にイチオシしたいのが展覧会の公式図録。

サグラダ・ファミリア聖堂に関する資料が充実した公式図録

本展の学術監修を担当した神奈川大学名誉教授・鳥居徳敏氏も「ぜひ」とおすすめしており、展示物以外のサグラダ・ファミリア聖堂に関する資料が収録されています。
とても充実した内容となっているので、こちらも要チェックです!

 

「ガウディとサグラダ・ファミリア展」開催概要

本展は東京の他、滋賀と愛知でも開催されます。

【東京会場】

会場
東京国立近代美術館 1F企画展ギャラリー
会期
2023年6月13日(火)~9月10日(日)
開室時間
10:00~17:00(金・土曜日は20:00まで)
※入館は閉館の30分前まで
休室日
月曜日(ただし7月17日は開館)、7月18日(火)

 

【滋賀会場】

会場
佐川美術館
会期
2023年9月30日(土)~12月3日(日)
開室時間
9:30~17:00
※入館は閉館の30分前まで
休室日
毎週月曜日(祝日に当たる場合はその翌日)

 

【愛知会場】

会場
名古屋市美術館
会期
2023年12月19日(火)~2024年3月10日(日)
開室時間
9:30~17:00 
※入館は閉館の30分前まで
休室日
月曜日(祝休日の場合は開館し、翌平日休館)・年末年始

※展覧会は終了しました。

         

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