原寸大の金色堂が上野に!? 建立900年 特別展「中尊寺金色堂」レポート

原寸大の金色堂が上野に!? 建立900年 特別展「中尊寺金色堂」レポート

建立900年 特別展「中尊寺金色堂」が東京国立博物館 本館で開催されています。今回の特別展では、岩手・平泉の絢爛豪華な世界遺産、中尊寺金色堂の中央壇上にある11体の仏像を国宝指定後に寺外初公開。

そして、最先端技術8KCGで原寸大の金色堂を会場にデジタルで再現し、まるで堂内にいるような感覚を味わえる展示も。建立900年にあたる2024年に開催される特別展だからこそ叶った“歴史的”な展示が満載の本展。その見どころや注目ポイントをご紹介します。

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目次

奥州藤原氏四代が眠る聖地「中尊寺金色堂」とは

国宝・中尊寺金色堂は、平安時代末期の天治元年(1124)に奥州藤原氏初代・藤原清衡(10561128)によって建立された東北地方現存最古の建造物。幼い頃に父を、20歳で妻子を戦いで失った清衡は50代で中尊寺に信仰の拠点を作りました。その中の金色堂に長く続いた戦乱の世に平和をもたらしたい、犠牲になった人々がみな浄土にいけるようにと戦いのない極楽浄土を表現。

堂内は、100年にわたり東北地方一帯を治めた奥州藤原氏の栄華を物語るかのように金色に輝き、さらには、螺鈿や蒔絵など絢爛豪華な工芸で荘厳されています。清衡の平和への願いを受け継いだ二代基衡、三代秀衡、四代泰衡が眠る聖地・金色堂は平成23年(2011)にはユネスコの世界文化遺産に登録されました。

 

歴史的公開!平泉から国宝仏像11体を展示

金色堂内にある中央、西北隅、西南隅の3箇所の須弥壇に奥州藤原氏四代が眠っているとされています。本展では金色堂建立者の初代・清衡が眠るとされる中央壇上の国宝仏像11体すべてを展示。寺の外でのそろっての公開は国宝指定後初となります。

通常平泉の金色堂は保護のために覆堂という鉄筋コンクリートの建物の中に設置。またガラススクリーンで覆われているため、間近で仏像を見ることはできません。さらにコンパクトな堂内に仏像がひしめきあって配置されているので、奥の方は特に目が届かない状況。

しかし、本展では11体の仏像を前後左右から至近距離でじっくり鑑賞できる展示に。現地にならって阿弥陀如来を中心に並べる配置となっています。平泉の堂内で須弥壇を囲んでいる美しい螺鈿が施された巻柱を模した演出も。普段なら特別な許可がなければ入れない金色堂の国宝仏像を間近で鑑賞できる貴重なチャンスといえるでしょう。それでは、国宝仏像鑑賞で注目すべきポイントをご紹介します。

時代を先取りした造形に注目!国宝「阿弥陀如来坐像」


国宝 阿弥陀如来坐像(平安時代・12世紀 岩手・中尊寺金色院蔵)

仏像ゾーンの奥中央には阿弥陀三尊を配置。国宝「阿弥陀如来坐像」、向かって右に国宝「観音菩薩立像」、左に国宝「勢至菩薩立像」が展示されています。当時、京の一流仏師が手掛けたとされる阿弥陀如来坐像で、報道内覧会において、担当研究員からは右肩にかかる袈裟が注目ポイントとして語られました。実態に近づけるように身体と衣服と一体化せずに分け、別の材料で作っている点も当時としては目新しい造形です。

また、時代を先取りした最先端の表現技法は左右に振り分けるような逆V字型に刻む後頭部の螺髪にも。これは鎌倉時代以降に流行する新しいスタイルで平安時代にこの螺髪表現は本像以外ないそう。平安時代の後に隆盛する新しい表現技法を清衡が受け入れ、平泉に新時代を先取りした独自の文化があったことを物語っています。

表情や袈裟にもそれぞれ表情が 国宝「地蔵菩薩立像」


国宝 地蔵菩薩立像(平安時代・12世紀 岩手・中尊寺金色院蔵)

国宝「地蔵菩薩立像」は阿弥陀三尊の両脇に3体ずつ、合計6体並んでいます。頭部が小さい造りであることから阿弥陀三尊より後の世代に制作され、造像当初から配置が変わった可能性があると考えられています。

阿弥陀三尊と六地蔵のセットは、六道輪廻(ろくどうりんね)からの救済を願う当時の往生思想を体現したもの。地蔵それぞれの表情や宝珠を持つ左手、手のひらを向けて垂らした右手。袈裟の流れるような描写も一体ずつ微妙に異なっている点もご覧ください。

ほとばしる躍動感!邪気を踏みつける二天像


国宝 持国天立像(平安時代・12世紀 岩手・中尊寺金色院蔵)

国宝 増長天立像(平安時代・12世紀 岩手・中尊寺金色院蔵)

足元の邪鬼を踏みつけ、手を大きく振り上げてにらみをきかす国宝「持国天立像」、国宝「増長天立像」の二天像。袖がまくれあがり、躍動感のある表現も鎌倉時代の流行を先取りしたように感じられます。地蔵菩薩と同じく阿弥陀三尊よりも後に制作され、本来別の檀にあった可能性が。さらに像名が逆、安置位置も左右逆なのではとも考えられており、想像をかき立てられます。

 

原寸大の金色堂が上野に!?超高精細8KCGで黄金空間を体感


©️NHK/東京国立博物館/文化財活用センター/中尊寺

900年にわたって奥州藤原氏の平和への願い、祈りが捧げられてきた中尊寺金色堂。平泉で厳重に保護されているため、現地ではなかなか細部まで見ることができません。本展で幅約7m×高さ約4mの大型ディスプレイ上に原寸大の金色堂を再現しました。


©️NHK/東京国立博物館/文化財活用センター/中尊寺

NHKと東京国立博物館が共同で開発した超高精細なデジタルアーカイブの手法「8KCG」で現実では不可能な金色堂の間近での拝観を叶えてくれます。大迫力の映像、圧倒的な没入感で金色堂を体感、鑑賞することで、改めて金色堂の素晴らしさや奥深さに気付くことができるでしょう。

 

金色堂を彩る国宝、清衡の棺や副葬品なども注目


国宝 金銅迦陵頻伽文華鬘 平安時代・12世紀 岩手・中尊寺金色院蔵

堂内の長押に飾るなどして荘厳にするために使う「華鬘」。国宝「金銅迦陵頻伽文華鬘」は迦陵頻伽という上半身が人間で下半身が鳥の空想上の動物がデザインされています。極楽浄土を表現した金色堂にふさわしいモチーフを間近でじっくり鑑賞してください。


重要文化財 金箔押木棺 平安時代・12世紀 岩手・中尊寺金色院蔵

奥州藤原氏初代・清衡の遺体を納めていた中央壇の棺も展示。かつて内外ともに金箔を押す手法で金色に輝いていたという棺の副葬品の一部も会場に。32グラムの当時としては大きめの金塊は平泉の黄金文化の象徴的な品。他に刀装具や念珠などの残欠などめったに見られない貴重な品々もこの機会に。

 

定番もユニークな品も揃う!会場限定オリジナルグッズ

来場記念に買い揃えたい会場限定のオリジナルグッズも豊富。定番のTシャツやクリアファイル、マグネット、ポストカードは種類が充実。

ユニークなところでは国宝「持国天立像」に踏みつけられた邪鬼のぬいぐるみ、今回会場に揃った11体の仏像のアクリルスタンドなども。わんこそばや南部せんべいといったおいしい岩手名物も並んでいました。

建立900年 特別展「中尊寺金色堂」概要

■会期:2024年1月23日(火)~4月14日(日)
会場:東京国立博物館 本館 特別5室
■開館時間:午前9時30分~午後5時
※2月9日(金)から、毎週金曜日と土曜日は午後7時まで
※入場は閉館の30分前まで

■休館日:月曜日、2月13日(火)
※ただし、2月12日(月・休)、3月25日(月)は開館
■観覧料(税込):一般 1,600円 大学生 900円 高校生 600円
※中学生以下、障がい者とその介護者1名は無料。入館の際に学生証、障がい者手帳等をご提示ください。
公式サイト:https://chusonji2024.jp/

※展示作品、会期、開館時間、休館日、入館方法等については今後の諸事情により変更する場合があります。最新情報は公式サイト等でご確認ください。
※事前予約不要です。混雑時は入場をお待ちいただく可能性がございます。

 中尊寺金色堂は藤原清衡(1056~1128)によって建立された東北地方現存最古の建造物で、2024年に天治元年(1124)の上棟から900年を迎えます。これを記念して開催する本展では、堂内中央の須弥壇に安置されている国宝の仏像11体を一堂に展示するほか、かつて金色堂を荘厳していた国宝・金銅迦陵頻伽文華鬘(こんどうかりょうびんがもんけまん)をはじめとするまばゆいばかりの工芸品の数々をご紹介します。また、会場内の大型ディスプレイでは8KCGで原寸大に再現された黄金に輝く金色堂とその内部を間近にご覧いただけます。世界遺産・平泉の迫力のある文化と歴史の粋をどうぞお楽しみください。

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◆レポート/ライター
高田りぶれ(たかだ・りぶれ)

山形県生まれ。ライターなど。放送作家のキャリアを生かし、テレビ・ラジオ番組のおもしろさを伝える解説文を年間150本以上執筆。趣味は観ること(プロレス、サッカー、相撲、ドラマ、お笑い、演劇)、遠征、料理。

         
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